元の作品が他者の著作物だった場合は著作権侵害に当たる可能性があるが、罰則が生じるという意味では親告罪なので、権利者に訴えられて初めて違法の責任を問われることになる。そのため、親告されないなら問題が無いという勝手な解釈をする人たちも出現していることが、取り巻く状況をややこしく見せている面もある。
これらのことを踏まえて、これまで「トレパク」として炎上した事例を振り返ると、正確には著作権侵害とは言えないものもあり、裁判で戦った場合は侵害に当たらない可能性が高いケースも混じっている。つまり、トレパクと騒がれてきた事象はほとんど、法的に問題か否かではなく、見た人たちがマナー違反と感じたり、裏切られたと感じるかどうかで、炎上につながってしまうのが実態だ。
YOASOBI絵師が「トレパク」で炎上したわけ
トレパク疑惑で最近、炎上した一人が、音楽ユニットYOASOBIのキービジュアルも担当した人気イラストレーター、古塔つみさんだ。作品の多くが既存の写真などをトレースしたものとして大炎上した。
騒動後、古塔さんは、「引用・オマージュ・再構築として制作した一部の作品を、権利者の許諾を得ずに投稿・販売してしまったことは事実」「写真そのものをトレースしたことはございません。模写についても盗用の意図はございません」とTwitterに投稿している。
刊行済みの『古塔つみ作品集 赤盤』は、掲載作品の一部が著作権及び肖像権などの侵害に当たる可能性があるとして出荷停止に。また古塔さんとポケモンのコラボTシャツを販売していたポケモン社は、作品はオリジナルと判断したものの、Tシャツの返品、オンライン注文のキャンセルを受け付けるとしている。古塔つみさんは「クライアントワークは全てオリジナル作品」としていたが、騒動を受けてファン側の心情に配慮した格好だ。
既に述べたとおり、トレース自体は技法の一つなので問題ない行為だ。しかし、古塔さんのケースでは、元ネタとなる提示されていない写真などがあまりに多く見つかり、画像反転やトレースで作品制作をしていた可能性が疑われたために問題となったというわけだ。