時計デザインをアップルが「iOS6」の時計デザインとして盗用した疑いがあるとスイス連邦鉄道(SBB)が商標権を主張。発端から約7年後の2012年にライセンス契約を結ばれ、アップルがSBBに使用料を支払うことで和解した(EPA=時事)
炎上する、炎上しないの違いはどこに
実は、どんな場合でも炎上するわけではない。炎上する側に今回が初めてとか収入を得たりせず身内で公開しただけなどの同情の余地があったり、悪意がない、故意ではないことが明らかな場合、炎上は自浄作用で小さくなることが少なくないのだ。
しかし、過去に何度も同様の行為を繰り返していたり、利益を得ているなど悪質性を疑われる場合、明らかな被害者がいる場合などは、炎上がさらに大きくなる傾向にある。
また、クリエイターが他者からの無断転載や転用などを防ぐには、無断転載禁止とうたうことが基本となる。念のため、いざというときに自分の作品であること、制作年月日がわかる証拠などを残しておくと安心だ。SNSなどで著作権侵害されたら著作権侵害申請をすることも必要だろう。
説明したように、これまでトレパクで炎上したり、作品が検証対象となった作家やアーティストは多数いる。才能や技術が高くても、一度そのような目で見られると、イメージダウンにつながり、大きな不利益を被ることになる。
トレパクとその炎上問題は、コピペ(コピー&ペースト)をめぐる諸問題と似たところがある。ソフトウェアやアプリ、カメラなどの機能が発達し使いやすくなったため、以前だったらとても手間がかかったことが簡単に行えるし、検証と呼ばれる行為も比較的容易だ。盗用と呼べる悪質なことも実行しやすくなったと同時に、トレパクだコピペだと訴えることもネットで匿名のまま、かつてより気軽に行えるようになった。そのため、実際には非難されるような内容ではなくても、疑いを打ち消す用意ができていないと、いつまでも炎上だけが残りがちだ。
SNSで受け取った情報のひとつひとつについて、真贋確認をしてから自分が発信する、という習慣はまだ根付いていない。トレパクだとネットで見かければ、条件反射のように非難にまわるユーザーが多いのが現実だ。トレパクは検証して証拠が集めやすいため、攻撃に対する正当性が得やすくなっている。さらに、すでに得ている人気や名声、地位、収入が高ければ高いほど、怒りを集めやすくなる。盗用したのに不当に人気・名声・地位・収入などを得ているのだから、非難・糾弾されて当然と考えるからこそ炎上につながるというわけだ。このトレパクから炎上というパターンは、しばらく続くだろう。