「光免疫療法」の仕組み
狙ったがん細胞を破壊するだけでは終わらない。
「バラバラになったがん細胞は、身体の免疫が認識しやすくなります。光を当てて死滅できるのは通常6~9割のがんですが、そこから免疫細胞が活性化し、転移がんや再発がんを攻撃するようになる。また、光免疫療法で“がんの共犯者”である免疫抑制細胞を破壊すれば、がん細胞の防御を崩すことができ、数十分のうちに本来持つ免疫システムが、がん細胞に対して働き始めます」(小林氏)
患者はどのように治療を受けるのか。
「現在の適応は再発がんの方に限られるため、入院中の患者さんが主です。アキャルックスを点滴投与後、翌日に手術室に移動し、患部に近赤外光を当てます。患部が深い時は超音波などで見ながら、光ファイバーを仕込んだ針を刺して光を数分当てます。処置後は1週間くらい、太陽光を避けてもらいます」(小林氏)
難しい手技は必要とされないため、どの医師でも行なえるという。今後は適応拡大が望まれる。
「食道がんと胃がんはすでに治験が始まっています。今後は子宮頸がん、肺がん、大腸がん、難治性の乳がんなどは適応拡大ができそうな話もあります。また、前立腺がんに対する抗体を新たに作ることも考えています」(小林氏)
※週刊ポスト2022年3月18・25日号