国際情報

ウクライナ危機で「日本も軍隊を持つべき」論に作家・甘糟りり子さんの視点

ウクライナ

戦火に包まれているウクライナ(写真/AFP=時事)

 ロシアが隣国ウクライナへ軍事侵攻を続けている。激しい戦闘により、民間人にも多くの犠牲者が出ている。終結の兆しが見えないこの戦争を、作家の甘糟りり子さんはどう見ているのか。

 * * *
 第三次世界大戦が始まってしまうのだろうか。そんなことを現実に心配する日がやってくるとはついこの間まで思わなかった。

 ニュース番組でウクライナの80歳の男性が銃を手にしている場面を見た。他にも、市民がロシアの戦車に向かって火炎瓶を投げつけたり、女性が銃の訓練をしている様子などが連日、報道されている。銃を持つ女性の爪に施された真っ赤なネイルカラーが印象に残った。

 ゼレンスキー大統領は市民にも武器を持つよう呼びかけているという。 SNSでは市民が戦争に参加することを美談のように報道していいものかという声もいくつか見かけた。戦争に加担することは決して美談ではない。だが、あっという間に平穏な日々が理不尽に奪われたウクライナの市民たちはやむにやまれず奮い立ったに違いない。不安だろうし、怖いだろう。彼らの行動を非難するつもりもまったくない。

 断固、戦争反対。戦争は殺人だ。武力や暴力、恫喝によって他者を押さえつけることはあってはならない。相手が誰であれ、どんな理由があっても。

 ウクライナの市民は普通に暮らしていたのに、ある日家の近くにミサイルが飛んできて、戦車があちこちに現れて、迷彩服の人が銃をこちらに向けてきたのだ。あんなふうに相手が武力や暴力、恫喝をしてきたとしたら、どうしたらいいのだろうか。同じようにし返せば、そうした行為を肯定してしまうことになるし、武器を手にすれば憎しみも大きくなる、ずっとそう信じてきた。しかし、無抵抗では自分も国も終わってしまう。やられた場合には、やっぱりやり返すしかないのだと、今回のウクライナ危機で実感した。

 とはいえ、もし私だったら、意を決して武器に手をかけるなんておそらく無理。ただガタガタと震えているだけだと思う。無抵抗という意思表示さえできないはずだ。それとも極限の状況がそんな平凡な市民も勇敢に変えてしまうのだろうか。戦争に直面した自分をこんなにリアルに想像したのは生まれて初めてだ。「私」ではなく「我が国は」「日本は」と大きな主語で語り、やたらと威勢が良くなる人が苦手だが、戦争になると「私」と「国」の距離が一気に近くなるのだとも感じた。

関連記事

トピックス

「第65回海外日系人大会」に出席された秋篠宮ご夫妻(2025年9月17日、撮影/小倉雄一郎)
《パールで華やかさも》紀子さま、色とデザインで秋を“演出”するワンピースをお召しに 日系人らとご交流
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
2024年末、福岡県北九州市のファストフード店で中学生2人を殺傷したとして平原政徳容疑者が逮捕された(容疑者の高校時代の卒業アルバム/容疑者の自宅)
「軍歌や歌謡曲を大声で歌っていた…」平原政徳容疑者、鑑定留置の結果は“心神耗弱”状態 近隣住民が見ていた素行「スピーカーを通して叫ぶ」【九州・女子中学生刺殺】
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(左/共同通信、右/公式サイトより※現在は削除済み)
《“やる気スイッチ”塾でわいせつ行為》「バカ息子です」母親が明かした、3浪、大学中退、27歳で婚約破棄…わいせつ塾講師(45)が味わった“大きな挫折
NEWSポストセブン
池田被告と事故現場
《飲酒運転で19歳の女性受験生が死亡》懲役12年に遺族は「短すぎる…」容疑者男性(35)は「学校で目立つ存在」「BARでマジック披露」父親が語っていた“息子の素顔”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
9月6日に悠仁さまの「成年式」が執り行われた(時事通信フォト)
【なぜこの写真が…!?】悠仁さま「成年式」めぐりフジテレビの解禁前写真“フライング放送”事件 スタッフの伝達ミスか 宮内庁とフジは「回答は控える」とコメント
週刊ポスト
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン