さらに1回の性的な接触で、梅毒に感染する割合は約3割と非常に高い。コンドームを使用することで感染リスクを減らすことができますが、完全ではありません。オーラルセックスでは、喉の咽頭部に感染します。口に病変があれば、キスでも感染します。また、梅毒で潰瘍ができているとHIVなどの他の性感染症にも感染しやすくなります。
一方、妊婦の梅毒感染では、胎児に感染してしまい、生まれながらに先天性梅毒となる危険性もあります。今、国内で20代の女性に梅毒の感染者が激増している事態が報告されており、次世代への影響も心配されるのです。
梅毒の検査は一般の医療機関や保健所でも受けられます。不安がある読者は、ぜひ検査を受けてください。しかし、梅毒は自分が治療して治っても、パートナーが未治療ならば再感染を起こします。一度、梅毒に罹って治ったから、自分はもう梅毒に感染しないというのは間違いです。
現在の日本は梅毒患者が急増している異常な事態です。梅毒は感染力が強いので早期発見、すぐに治療を開始し、慢性感染を起こさないことが肝心です。
【プロフィール】
岡田晴恵(おかだ・はるえ)/共立薬科大学大学院を修了後、順天堂大学にて医学博士を取得。国立感染症研究所などを経て、現在は白鴎大学教授。専門は感染免疫学、公衆衛生学。
イラスト/斉藤ヨーコ
※週刊ポスト2022年4月1日号