ある日、銀座のホテルのロビーでバッタリ。むこうから手を差しのべて来ていつもより余計にアゴを出して「ごぶしゃたしていましゅ。ここでしゅのでお近くへ来た時はお寄りくだしゃい」と名刺をくれた。見るとオフィスの住所は、アメリカはニューヨークだった。あんまりお近くには行かない。世界規模の男なのだ。
こうして目を閉じると色々な名勝負があった。1974年のタイガー・ジェット・シン戦。シンの右腕を折った。アンドレ・ザ・ジャイアント戦。1976年には「格闘技世界一決定戦」と銘打った。1980年のスタン・ハンセン戦は猪木の「逆ラリアット」が決まった。1983年のハルク・ホーガン戦は失神し起き上れずそのまま病院送りとなった。そしてムハマド・アリと1976年に闘い、世論をまっぷたつにした。イノキ! ボンバイエ!
イラスト/佐野文二郎
※週刊ポスト2022年4月1日号