出井伸之(いでい・のぶゆき)/1937年、東京都生まれ。1960年早稲田大学卒業後、ソニー入社。主に欧州での海外事業に従事。オーディオ事業部長、コンピュータ事業部長、ホームビデオ事業部長などを歴任した後、1995年に社長就任
そうした需要はいろいろなところにあって、アジア諸国では、日本で技術やノウハウを蓄えたサラリーマンへの需要が非常に高いわけです。
多くの人が自分の対外的な価値を知らないまま、ただ漫然と定年までの日々を余生のように過ごす。それはとてももったいないことだと思います。
日本型企業の働き方を見ていると、50代にさしかかると、出世した人は自分では動かず部下に口先だけで指図するタイプになり、出世コースから外れた人は仕事に興味を失って、ただ退職金だけを目当てに会社に残ろうとする。僕からすると、仕事にコミットできなくなった時点で同じように見えます。
何も会社を飛び出さなくたって、社内で新しい仕事、チャレンジする場所を見つけることはできるんじゃないでしょうか。
今しきりに「定年延長」とか「70歳定年」という言葉が叫ばれ、ポジティブに受け止められているようですが、僕は嫌いです。定年が延びたというだけで、定年が決められていることには変わりがない。なぜ一律に年齢という基準だけでリタイアする時期を決められなければいけないのでしょうか。会社から必要とされなくなったときに、辞めればいいだけの話です。
そして仮に会社を辞めても、そこで終わりとは限らない。人生に引退はないからです。
60歳だって70歳だって80歳だって、働いて輝くことは可能です。その可能性から目を背けて、「定年後」や「余生」にばかり目を向けるのはあまりにもったいない。
自分の人生は会社のためだけにあるわけではありません。自分はどうありたいか、どういう人生を歩みたいかを決めるのは自分自身です。つまり、自分の人生を“経営”するのは自分なのです。