(『ねこいる!』より)
オーディション合格のためのネタ作りに違和感
──お笑い芸人として活動する一方、2013年頃からは絵も発表し始めます。絵を描くようになったきっかけは何でしたか?
田中:芸能界に憧れがないので、お笑い芸人として活動しつつ、ゴールをどこに設けていいかわからない状態に陥っていました。徐々に何を頑張ればいいのかすらわからなくなって、色々と悩みを抱えてしまいました。ふと気づいたらテレビ番組のオーディションに受かるためにネタを作る努力をしている。やりたいこととやっていることのギャップがどんどん大きくなっていました。
そんな時期にピースの又吉直樹さんに悩みを打ち明けたんですね。そしたら「特技を磨いておいた方がええよ」って言っていただけて。それで「自分の特技って何だっけ」と考えていたら「そうだ、絵を描けるわ!」と気づいて、10数年ぶりに絵を描き始めることになりました。当時ちょうどTwitterのアカウントを開設していたので、とりあえず絵を描いてTwitterに投稿するようになって、気がついたら“ギャグ漫画家”と呼ばれていました。
──その時に投稿されていたネタの一つが『サラリーマン山崎シゲル』ですよね。今でもTwitterやInstagramで新作が発表され続けています。
田中:僕自身はサラリーマン経験がないので、会社や仕事内容といった具体的なことは決めずに、大喜利の回答を絵で描くようなテンションでやっています。最初は会社に置いてありそうな事務用品などをモチーフに、どうやったら面白くなるだろうかと考えていましたが、今ではフォロワーの方にコメント欄でお題を募集していて、いただいた単語から考えて描いています。
どちらかと言うと『サラリーマン山崎シゲル』はトレーニングの意味合いで続けていますね。原稿料も出ないですし、勝手にSNSに投稿しているだけなので、アイデア出しの側面が強い。僕にとって発想のベースは大喜利的なところにあって、やっぱりお題がないと続けられないんです。なので自分の中でノルマを課して描き続けています。その中から「これは漫画にしたら面白そうだな」とか「この発想は絵本で使えるな」といったアイデアも出てくるんです。