──『ねこいる!』の売れ行きが好調です。大人が読んでも面白い内容ですが、なぜ「猫がいるだけ」というユニークな絵本を描くことになったのでしょうか?
田中:「猫がいっぱいいたらなんか面白いな」と思って、オカリナの穴から猫がピョンピョン顔を出している落書きを描いたことからスタートしました。穴から猫が顔を出していたら可愛いですし、なんか面白いじゃないですか。で、絵本というのはそういう「なんか面白い」がやれる場所だと思っているんですよ。
漫才やコント、ギャグ漫画だと「ここがこうだから面白い」ってちゃんと説明が入っていないとなかなか喜んでもらえないんです。もしくはツッコミを入れて「ここは面白いですよ」ってフラグを立てる必要がある。多くのギャグ漫画はツッコミだらけですよね。それは物語のテンポがあるから仕方ないことでもあるんですが、そういった説明やツッコミを省きたいという気持ちがずっとありました。
絵本だとそれができます。逆に「いや、オカリナから猫が出てくるわけないやんけ!」ってツッコミを入れてしまうと、面白くない。そうではなくて、猫がたくさん出てくるなんか変な状態、そこから生まれる「なんか面白い」という現象そのものを打ち出したい。ツッコミや説明ではなくて、現象そのものを描きたいと思っているんです。
海外でウケるお笑いのかたち
──ある種のお笑いは、漫才やコントではなく、絵本の方がよりよく表現できるということでしょうか?
田中:漫才やコントだとあまり面白がってもらえないタイプの笑いもあります。それに日本のお笑いを海外に輸出することも難しい。そうした状況は変えていきたいと思っていました。日本のギャグ漫画を英訳してアメリカに持って行ったとしても、おそらく面白がり方をなかなか理解してもらえないと思うんです。そもそもの文化が違うので。
海外でウケるお笑いとなると、アメリカならもともとアメリカ人を笑わすために作られたものである場合が多い。僕としては、日本で作られたお笑いの発想をグローバルに届けるために、いわゆるお笑いとは異なるフォーマットでアウトプットしようと考えていて、それで絵本を描いているところがあります。見た目は絵本ですけど、発想としてはお笑いをもとに作っているんですね。