渋谷での戦争反対デモ。多くの在日ロシア人が参加した
混乱状態にあるロシア人の意思を統一するために、プーチン氏は在外ロシア人による情報発信に神経を尖らせている。日本や祖国にいる家族の身に危険が及ぶことを案じ、取材で語ることをためらったり名前を出すのを恐れる在日ロシア人も多い。
在ロシアジャーナリストの徳山あすか氏が語る。
「家族に身の危険が及ぶことはまず考えられませんが、ロシアでは軍や国外で活動する国家機関に関してフェイクを広めたと判断された場合、最大で禁固15年が科される法律が施行されました。フランス在住のロシア人ブロガーが国際手配になった例もあり、住んでいる場所も関わりなく対象となります」
思いを発信することもままならない在日ロシア人たち。そうした状況も理解せずに日本国内で彼らを非難したり、差別的な行動を取ることは言語道断だ。
大阪でロシア料理店を営むハバロフスク出身の40代女性・タチヤナさん(仮名)は、こう話す。
「私は日本が好きだから、日本人に私たちのことを悪く思われるのがとてもつらい。
でも、いつかはこの憎しみも必ず晴れると信じています。私の父は日露戦争の記憶から日本を嫌っていましたが、東日本大震災の時には『ロシアに日本人の逃げ場所を作ってあげたい』と話していました。私はいま私を応援してくれる日本人に父の愛を見て、心がいっぱいになります。一刻も早くこの戦争を終わりにしてほしい」
取材協力/竹中明洋(ジャーナリスト)
※週刊ポスト2022年4月29日号