支援している青木恵子氏(写真提供/二村真弘氏)
平野氏は実際、両手と顔にやけどをし、高温の煙を吸い込んで気道熱傷の診断も受けており、男性の証言と状況が一致する。男性は検察にも同様の話をしたが、裁判では証人として出廷を求められなかった。平野氏はこの目撃者の証言を司法の場で伝えたいと考えているという。
「東住吉事件」の当事者が支援
そんな平野氏を支援し、「裁判のやり直し=再審」への道を開きたいと取り組んでいる女性がいる。青木惠子さん(58)。自身も、大阪市東住吉区の自宅に火をつけ、娘を殺害したという“濡れ衣”を着せられ、無実の罪で20年間も獄中にいた体験を持つ。有名な「東住吉事件」だ。
青木さんの事件では、弁護団が行なった火事の再現実験により、火事は放火ではなく自宅車庫にあったホンダの車のガソリン漏れによる自然発火の疑いがあると証明され、再審で「無罪」を勝ち取ることができた。
青木さんと平野氏に面識はなかったが、自分と同じように放火殺人の濡れ衣を着せられたのではないかと考えた青木さんは、収監先の徳島刑務所で平野氏と面会を重ねてきた。死亡した女性を縛っていたのは、平野氏と同様に覚醒剤を吸引していた女性が幻覚などによる危険な行動を取るのを防ぐためで、火災発生時は手などをほどいていたという説明も、青木さんにとってそれなりに納得できた。出火場所や状況について検察の主張に矛盾があることもわかったという。