動画の撮影を行なった映像制作者の二村氏(写真提供/二村真弘氏)
逮捕から19年間、ほとんど誰にも信用してもらえなかった平野氏の訴えに対し、今年に入って動きがあった。「平野さんは女性を必死に助けようとしていた」とカメラの前で証言する目撃者が現われたのだ。
「やけどで路上に倒れ込んでいた」という証言
証言をしたのは、荷物の配達員をしていた当時25歳の男性。配達中にたまたま現場を通りかかって火事を目撃したという。平野氏に荷物を届けたことはあるが深いかかわりはなかった。平野氏のために嘘を言う必然性はない立場だと考えられる。
この男性の証言をカメラに収めたのは、ドキュメンタリー映像制作者の二村真弘(にむら・まさひろ)氏。証言によると、男性が現場に着いた時、すでに住宅から煙が上がっていて、平野さんは中から煙に巻かれながら犬を連れて出てきた。
「命からがら慌てて出てこられて、助かった感じに見えたんです」
二村氏がカメラに収めた映像のなかで、配達員だった男性はそう話している。男性の証言によれば、平野氏は犬を近所の人に託すと「まだいるんや。上におんねん」と言って、すごい熱と煙の中、ダアーっと2階に上がっていったという。上で「おーい!おーい!」と呼んでいるけれど、何の返答もない。ひたすら熱と煙が立ちのぼっていた。そんな中でも平野氏は「助けたってくれ、助けたってくれ」といった叫び声をあげていたので、配達員だった男性は「死ぬ気か、この人は」と感じたと振り返っている。もう無理だと悟ったのか、家の中から出てきた時、平野氏の顔はすすで真っ黒になり、やけどを負って路上に倒れこんで周囲の人に介抱されていたというのである。
二村氏が「検察は被害者が救出される可能性を平野さんが自ら閉ざしたと主張していますが」と問いかけると、目撃者の男性は「それは違いますね。まず中に人がいるっていうのを第一声に言ってたんで」と答えている。続けて検察が「平野さんは女性を助けようとしなかった」としていることも、「一番本人がどうにかしたかった感じがしました。あの熱と煙の中2階に行くっていうのは、結構リスキーですね」と証言した。