多くの人が悩んでいるという「股関節」の痛み。川崎医科大学附属病院整形外科教授で股関節外科が専門の三谷茂医師によれば、実際に痛みなどの症状を有する変形性股関節症の患者数は、男女合わせて推定500万人程度と考えられている。
脚の付け根にある左右の股関節は人体で最も大きな関節で、骨盤と大腿骨を繋ぐ“要”だ。周囲には大腿四頭筋や内転筋などがあり、「立つ」「歩く」「座る」など下肢を大きく動かす際に重要な役割を果たしている。その股関節の軟骨がだんだんすり減って変形したり、骨同士がこすれて炎症を起こしたりする病気が「変形性股関節症」だ。
変形性股関節症の治療は、鎮痛剤で痛みを緩和し、筋トレなどで症状を改善する「保存療法」と、根本的な治療を目指す「手術療法」に分けられる。
前都知事の舛添要一氏(73)は、変形性股関節症の治療のために、股関節を人工股関節に換える手術を受け、長年の苦痛から解放された。舛添氏は「術後のリハビリこそが本当の勝負」と言う。
舛添氏が最初に異変に気付いたのは2007年に厚労相になってからだった。
「予算委員会で朝から晩まで答弁のために座っていなければならない。その時に腰痛がひどくなったのです。座り心地の悪い椅子に座りっぱなしのせいだと思いました。定期的に鍼やマッサージに通い一時的に良くなっても、腰の痛みは少しずつ増していた。まさか、原因が股関節だったとは……」
“腰”の痛みと長年格闘した舛添氏の病気が、変形性股関節症と判明したのは都知事時代だった。
「痛みがひどくて片足を引きずって歩くようになり、都議会の答弁で演台に向けて立ち上がるたびに痛みを感じていました。1回動くだけで30秒から1分くらいは痛くなるので普通に歩くことができないんです。
腰痛と信じて疑わなかったのですが病院に視察に行った際に、車から降りて痛がる私を見て、整形外科が専門の院長さんに『知事、それは股関節ですよ』と指摘された。後日レントゲンを撮ると、『左の股関節の軟骨が摩耗してひどい。右もこうなりますよ』と医師に告げられました」
しかし、公務があるためすぐ手術というわけにはいかず、“つなぎ”の処置としてズレた脚の長さを調整するために「革靴の底上げ」で対応した。
「革靴のヒールを片方だけ1~2cm底上げして、あえて左右の靴の高さをズラしたんです。そうすれば自然と重心が移るので歩く時に足を引きずらなくなる。公務で視察する時も、テレビに映る時も少し楽になり、しばらくはそれで凌いだ」(舛添氏)