一方山本氏はこれからは〈ファミレス〉、つまりホームより頼れる家族がいないことが問題視される時代だとし、いかに血縁を超えた支援を構築し、家族を再定義するかだと末並氏に言う。
「鋭いことは鋭いんですよ、特に呑んでいない時は(笑)。僕自身は下戸なんですけど、たぶん彼や山谷とは一生つきあっていくと思う。本が出来たからバイバイ、とは、元々言えない性質なんで」
どこか憎めない山本氏と、戸惑いや違和感を隠さない訊き手の関係性が印象的なノンフィクションだ。人と人は、やはり生身が面白い。
【プロフィール】
末並俊司(すえなみ・しゅんじ)/1968年北九州市生まれ。日本大学芸術学部写真学科を卒業後、テレビ制作会社に所属。報道番組制作に従事し、2006年よりライターとして活動。両親の在宅介護を機に、2017年介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)を取得。介護や福祉を軸に各誌で執筆活動を展開し、昨年、本作で第28回小学館ノンフィクション大賞を受賞。「僕もドヤには1週間泊まったけど3畳は無理。でも山谷みたいなシステムのある町に、将来は住みたい」。168cm、62kg、A型。
構成/橋本紀子 撮影/内海裕之
※週刊ポスト2022年5月20日号