「いまにして思えば、心のどこかに原田さんの唄を伝承するというとおこがましいんですけど、残していきたいというか、次の世代につなげていきたいというのがあったんですね」
アルバムのタイトル『役者唄』について尋ねると、
「いやいや、そんな大層なことじゃないんですよ。逆説的な話で、ミュージシャンのかたと一緒に芝居の仕事をすることがあるんですが、いつも役者の演技とはどこかが違うなと思っていたんです。うまく言えないんだけど、リズム感みたいなものが独特なんですね。だとしたら、役者が唄を歌う場合も、何か独特な表現になるのかなと思って。つまり『役者唄』というタイトルには、役者ならではの感情の込め方が聴く人の心に届けばいいな、新鮮さを感じてもらえたらいいなという期待が込められている、ということなんです」
なるほど〜。アルバムは、昨年9月に青山の『ブルーノート東京』で行った無観客ライブを収録。5月にもライブを行う予定で、どんどんのめり込んでいるようだが、のめり込むといえば、芸能界屈指のゴルフ好きとしても知られている。ゴルフは好きなだけではなく、大きな大会のアマチュア部門で何度も優勝するほどの腕前。多才であり、多趣味であり、凝り性でもあるのだろうか。
「どれでもないと思うんですけど。そーか、ゴルフね。ゴルフを続けたい理由と、唄を続けたい気持ちは共通しているかもしれません。どちらも緊張感があっていいんですよ。
ゴルフのアマチュアの大会に出場して、ティーグラウンドに立つと、ギャラリーの視線が一斉に集中しますよね。お手並み拝見みたいな感じで(笑い)。すごいプレッシャーだったりするんですけど、それって役者をやっているだけだったら感じることのない感覚なんですよ。
もちろん、ぼくは役者という仕事が好きなんだけど、役者だけをずーっとやっていて、いつも同じ筋肉だけを使っていたら、体全体のバランスが悪くなっちゃった、みたいなことがあるんです。だから、一緒に歌おうよと言ってくれる仲間の存在はありがたいんですね」