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知床遊覧船、引き揚げ作業中に落下 税金からの追加出費は「発生せず」と海上保安庁

どんなに慎重を期しても、引き上げ作業には落下のリスクがあるという(時事通信フォト)

どんなに慎重を期しても、引き上げ作業には落下のリスクがあるという(時事通信フォト)

 痛ましい沈没事故からひと月あまり。再び“事故”が起きた。5月24日、北海道・知床半島沖で、引き揚げ作業中の観光船「KAZU I」が再び海底に落下した。船体は23日までに海面近くの水深20mまで吊り上げられていたが、斜里町沖へと移動中に固定ベルト2本が切れ、海底に落ちたという。再度「KAZU I」の引き揚げ作業が行われ、27日には網走港に運ばれた。

 沈没船の引き揚げ作業に詳しい日本水難救済会常務理事の遠山純司氏が語る。

「水中から海面上に吊り上げる際は、沈没した船体と作業台船の双方に強い負荷がかかるため、安定して作業ができるよう海流が弱く、船体が落下しても回収が容易な浅い海域に持っていくのが基本です。そのための移動、『曳航』は非常に繊細な作業で、海流の強いところではベルトへの負荷も強まり、船体との摩擦も増えるため、断裂するリスクは常に付きまとう。流れるプールに逆らって歩くようなものなのです。過去にも曳航中にベルトが切れた事故は起きており、私が現役の海上保安官だった時も、曳航は大変緊張する作業でした」

 どんなに慎重を期しても落下のリスクがあるという引き上げ作業だが、「KAZU I」が落下したのは水深182mで、当初の沈没地点(水深120m)より深い。

「今回は潜水士を使った作業は予定されておらず、無人潜水機による遠隔操作でベルトの取り付け作業をするので、作業難易度は大きく変わらないと思います」(遠山氏)

 とはいえ、引き揚げ作業はやり直しとなるわけで、費用面はどうなるのか。報道によれば、海保は引き揚げ作業を担う民間業者「日本サルヴェージ」と約1億4000万円で契約しており、この金額はすべて国が賄うことを国土交通省が明らかにしている。

 税金から追加出費が発生するのか、海保に聞くとこう回答した。

「現段階で追加の費用負担が発生することはありません。今回の契約は船体の陸揚げまでのもので、作業途中のトラブルは当初の契約の中に含まれています。追加作業費が発生しないことは、すでに業者様にも確認済みです」(広報室)

 事故原因の究明が待たれる。

※週刊ポスト2022年6月10・17日号

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