多発する豪雨災害を受け、気象庁は6月から豪雨の要因「線状降水帯」の発生を半日程度前から予測する取り組みを始めた。
「水蒸気を中心に大気の観測を強化したこと。スーパーコンピュータによる予測シミュレーションの精度を向上させてきたことで可能となりました」(気象庁技術開発推進室・伊藤渉氏)
情報によっていち早く危険を察知した住民の早めの避難の準備が期待される。
とはいえ課題も多い。現状の的中率は25%程度。3回に2回程度は発生を予測できないという検証結果もあった。予測地域は「九州北部」「関東甲信」など全国を11に分けた地方単位にならざるを得ない。
「2年後の2024年には都道府県単位、2029年には市町村単位で予測が可能となるよう、今後も観測・予測技術を強化していきます」(同前)
さらなる精度向上を目指す一方、災害への警戒を怠らないよう呼びかけている。
豪雨は増加傾向
「豪雨」とされる1時間あたり50ミリ以上の雨は、年間平均327回発生している(気象庁発表)。この数字は統計が取られ始めた1970年代に比べ、1.4倍で増加傾向にある。
地上の暖かい空気と上空の冷たい空気が対流し、上昇気流が強まると発達するのが積乱雲で、雨や雷などを発生させる。局地的な大雨には必ず積乱雲が関連している。各地で被害をもたらす線状降水帯は、積乱雲がベルトコンベアで運ばれるように次々と発生し、線状に連なる現象。短時間に大量の激しい雨を降らせるが、発生のメカニズムには解明されていない部分もあり、正確な予測が難しい。
不意に襲ってくるゲリラ豪雨も予測が困難な現象。雲の発生を確認できても、どの雲がゲリラ豪雨に発展するのかわからないからだ。激甚災害から身を守るためには、ささいな情報も見逃さず、常に警戒を怠らないことは言うまでもない。