根強いファンに支えられている(番組公式サイトより)
自転車にまたがる火野さんの姿を見つけた沿道の女性たちは、歓迎して嬌声を上げる。サインをおねだりする。それに応える火野さん、何枚も書いた色紙の中に一つ漢字のサインを紛れ込ませて「漢字にあたった人は今夜一緒に過ごそう」と即興を連発。熱中症を「ね、チューしよう」と変換する火野さんのセンスがこの番組の魅力の一つになっています。
それは同時に、セクハラとは何かということを、図らずも問いかけてきます。「相手が不快だと感じない、そんな関係が成り立つ場合はセクハラには該当しない」ということを。
ただし、TVという不特定多数の視聴者を前提にした番組でそれが成り立つ(と見える)ところがまたまた不思議で興味深い。おそらく火野さんと画面に登場する人、視聴者の間でそれぞれ了解の関係がある、ということでしょう。
言葉とは奥深いものです。話をする相手、背景の文化、口調、人間同士の関係や前後の脈絡すべてが関わっている。しかし昨今のSNSでは前後関係や文脈を無視し、一言だけ取り上げて「許すな!」といった反応も目立ちます。やたら言葉狩りばかり横行すれば、社会はすさんだ雰囲気になり、表現の領域もどんどん狭められていくことになる。この番組が、そうした言葉の奥深さまで考えさせてくれるとすれば、素晴らしい。
冒頭の画面には大きく「制作・著作NHK」と表示が。もしかしたら、自転車旅のパクリ番組防止のためかもしれませんが心配せずとも大丈夫。過去には週刊誌を賑わせ女性遍歴華々しいモテ男。今や74才の自然体キャラ・火野正平がいなければ、決して成り立たない旅だから。見ている人がほんわかと癒やされたり勇気をもらったり。熱心な視聴者に精神的な快適性を届けている火野さん、今後も末長く旅を続けていってほしいと願います。