国連(UN)が定めている「持続可能な開発目標」(SDGs)の17目標[国際連合ホームページより](時事通信フォト)
「もちろん、SDGsの理念自体は素晴らしいものですが、なぜ各マスコミが力を入れて取り上げた……というより『力を入れられたか』というと、PRのための金が出ていたからです。ジリ貧と言われるテレビ局では、すぐに収益となるものでないと、新規企画に金が出ることは滅多にありません。でも、SDGsは世界的な流れで政府も音頭を取っている一大事業。広告代理店やスポンサーが一斉に右向け右でやるから金も動く。SDGsネタをやれば、(業界的な)金の流れが生まれたんです」(岡田さん)
民放の収入源である広告を出稿する企業は、本業で利益をあげるために存在しているものだが、現代では、大企業であればあるほど、社会の公器としての存在意義を示すことも求められる。利益追求しながら社会的意義にも貢献するには何をしたらよいのか、役立ちたい希望を持ちつつ、どうしたらよいのか判断も決断もしかねている企業は少なくない。その迷い道から抜け出すような役割を広告代理店が担うことがある。その落とし所が近年は、SDGsに関わることに集中していたといっても過言ではない。だから、大企業はこぞって「SDGs」への取り組みを競うようにアピールしたのだ。
その結果、広告代理店だけでなくPR会社や、ありとあらゆる代理店がSDGs関連の企画を提げ、売り込みをかけていた。その結果として、数年前からテレビで組まれる特集などで一気に「SDGs」色が強まったのは、読者もご存知の通りだろう。
ところが、視聴者のウケは悪かった。つまらないというより、所詮は綺麗事だと見抜かれていたのではないかと、岡田さんは自嘲気味に話す。
「代理店もテレビ局内にも、SDGs関連のポスターが一斉に張り出され、グッズが作られました。でも、未来へ持続可能な世の中にしようと上から呼びかけるような内容ばかりで、本当にこれは視聴者が知りたい、求めていることなのかと。疑問を持ちながらつくったものは、視聴者にも、わだかまりがなんとなく伝わるものです。だから反響も、言うほどなかった。そこに、感染症や戦争の話が出てきて、いくら旗振りをしても、SDGsへの関心はそれほど高まらなかったのが実情でした」(岡田さん)
SDGsの理念が重要だという事実は変わらないし、先進国と呼ばれる国々が、これまで通りの方法をとっていれば、人間は本当に滅んでしまうかもしれない。そんな不安は誰もが感じているはずだ。ただ、せっかくの理念も金儲けの口実に使われ、一部既得権益者の生き残りや逃げ切りのためだけに利用され始めたのだとしたら、市民が一斉に興味を無くすのも無理はない。そもそも「私たちの働き方が持続可能ではない」(前出・大石さん)ことが、視聴者に浸透してゆかない最大の原因かもしれない。