取り押さえられる山上徹也容疑者(朝日新聞社/時事通信フォト)

取り押さえられる山上徹也容疑者(朝日新聞社/時事通信フォト)

「山上容疑者は、かつては実家が裕福で豪邸に住んでいたが、母親が旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)への多額の寄付により破産。そこから経済的に貧しい生活となり、家族も崩壊していったようです」(全国紙社会部記者)

 貧困から抜け出すことができず、人間関係や社会的地位も失い、彼は“無敵の人”となってしまった。残ったのは、自分をこのような状況にした宗教団体への一方的な恨みだけ。経済的な貧困は無敵の人を構成する一つの要素だと見られている。

日本には年収200万円以下で働いている人たちが約1200万人いるといわれている。1998年から2020年までのおよそ20年間で、その数は371.3万人も増加。さらに、日本の相対的貧困率は、1985年には12%だったが、2018年には15.4%となり、実に6人に1人が「相対的貧困」となっている。

「貧困が必ずしも“無敵の人”を生むわけではないが、“無敵の人”のほとんどが社会的に困窮を極めている人たちでもある。格差社会といわれ、親から子へと貧困が連鎖する現代社会では、”無敵の人”は作られやすいとも言える。もしかしたら自分の近所にも、“いつでも刑務所に入ってもいい”と思っている人がいるかもしれない。そんな社会と考えてもいい」(経済ジャーナリスト)

 一方で、そんな危険人物を事前に把握したり、効果的に防御する方法が無いのも現実だ。山上容疑者を知る人物たちも、一様に「口数は少ないが、攻撃的な感じにも見えなかった」と語れば、容疑者と同じマンションの住民も「何日か前、上の方からドンドンと何か壁に打ち付ける音がしたが工事かと思った」と話すぐらいで、警戒されるほどの存在感ではなかった。誰もが「まさか元総理を銃で殺すなんて」と、想像もできなかった。

 経済成長優先の民主主義では、どうしても一定の勝ち組と負け組の両方を生みだす格差社会になる。そこで黒く膨れ上がるのは弱者の絶望。加えて、あるITジャーナリストは「現在のSNSでは、コロナ関連でも数々のデマや陰謀論が生まれたように、フェイクニュースや誰かをスケープゴートにする噂話が溢れています。社会的不安を抱える人たちは多く、彼らの不安をさらに増殖させる陰謀論が流布されている現状。そこから、今回の安倍元首相のように、謂れのない刃まで向けられる事態になってしまっています」と嘆く。

 どう対処すればいいのか。各国を見てもわかるが、政治だけに頼っていては時に取り返しのつかない事態になりかねない。国民一人ひとりが社会とインターネット時代と、真剣に向き合わなければならなくなっている。

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