国内

腹囲、コレステロール値は無視していい?“受ける必要がないかもしれない”検診・検査

必要な検査は何か(写真/GettyImages)

必要な検査は何か(写真/GettyImages)

 自覚症状のない病気を早期に発見するための検査や検診。しかし、なかには無意味な検査や、検査そのものが弊害を生む例もある。東海大学名誉教授で医学データ解析に詳しい大櫛陽一さんが指摘する。

「検査によって明らかになる数値の中には、“気にすること自体が害になるもの”が含まれています。たとえば、日本ではメタボ健診の腹囲はへその位置で測定しますが、特に女性は骨盤が大きく男性よりも高い数値が出てしまい内臓脂肪や疾患との関係を示すことができません。欧米では肋骨と腸骨の間のウエストでの測定が原則です。

 血圧の基準値も、厚生労働省は高血圧学会の提唱する数値をそのまま基準として使用しているにすぎません。臨床学会は薬代や治療費で利益を得たいため、患者数を増やせるような低い数値に基準を設定したがるのです。欧米では国が製薬企業との利益関係のない医師や研究者で委員会を構成して推奨値などを決めます。また、血圧は一日の中でも30mmHg前後も変化しています。健診時の数値での判断はほぼ意味がない」(大櫛さん・以下同)

 中性脂肪の値も一日の中で大きく変動する。

「女性は30~50代にコレステロール値が徐々に上昇するのが正常な変化です。健診では年齢による変化を無視した判定値をもとに薬に誘導されることも多いですが、中高年女性はコレステロール値の高い人の方が元気で死亡率も低いので薬で下げる必要はない。そもそもコレステロールは体にとって必須の栄養素です。細胞や脳神経、運動神経の膜となるほか、副腎皮質ホルモンと女性ホルモン、骨の合成に必要なビタミンDを作る原料にもなる。薬で下げすぎると細胞膜が薄くなってウイルスに感染しやすくなるうえ、うつ病リスクを上げるという研究結果もあります」

 コレステロールと同じく、血液検査の結果をもとに数値を測る腫瘍マーカーも、「無駄な検査」として複数の専門家からその名が挙がった。ときわ会常磐病院の乳腺外科医、尾崎章彦さんが言う。

「腫瘍マーカーはがんと診断された人が病気の広がりを推定したり抗がん剤の効果を判定する際などには有効です。一方、健康な人における役割は限定的です。人間ドックの中で提供している施設もあるようで、私のもとにも『腫瘍マーカー値が高いから受診した』という人がしばしば来院します。しかし腫瘍マーカーの値だけでは何のがんでどのくらいの進行度なのかわかりません。また、喫煙で上昇するような腫瘍マーカーもある。結局、各種がん検診を受けることになり、二度手間になる」(尾崎さん)

 住吉内科消化器内科クリニック院長の倉持章さんも声を揃える。

「腫瘍マーカーのうち、1つだけ信憑性が高く、受ける価値があるものは前立腺がんを見つけるための『PSA』という項目。しかしこれは当然、女性には関係がない。やはり受けるメリットはないといえます」

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン