◆「家族の貯金」は家族で使う
他にもトルコの「家族の形」は、日本の家族の形と大きく違うことにも驚きました。まず、娘とお父さんの関係です。父と娘の仲の良さは日本ではあまり見慣れない光景かもしれません。トルコを含む地中海近郊の人々の挨拶は、男性同士の挨拶でも頭と頭を突きあったり、体をたたいたりとスキンシップを取るのが普通です。女性同士、家族間では頬と頬を合わせてキスをする習慣があるようです。
町を歩いていていると10代後半、20代前半の年頃の女の子と父親世代の男性が指を絡ませて“恋人つなぎ”している様子を見かけた時に、一瞬「えっ!」という衝撃を受けました。よく見ると近くには母親もいます。トルコでよくみかける3人家族が歩いている光景なんです、これ。
私自身はその年頃は、父親に「臭い!」「キモイ!」「洗濯物は絶対に分けて洗って!」みたいな時期だったので、驚きました。もちろん私も小さい頃は手をつないで歩いていましたが、その年頃で指を絡ませて恋人つなぎをして歩いている様子は日本では見たことはありません。同じように母親と10代後半から20代前半の息子が手をつないで歩いている様子も、トルコではたくさん見られます。
それから平日の昼間の子供のお迎え。だいたい半分は父親が迎えにきています。子供を待っている間に親御さん方が和めるカフェが学校の目の前にあり、そこでタバコを吸いながらコーヒーなどを飲み、ゆったりと楽しくおしゃべりをしながら待っているのです。
母親が働いていて父親が主夫をしている家庭なのかと思いきや、仕事を抜け出して来ているそう。日本では、お父さんが会社から抜け出して、子供のお迎えに行くことは相当困難なことだと思うのですが、毎日仕事から抜け出せることが、どのようにして可能なのかと友人に尋ねると、「子供を迎えにいくのは会社を抜け出す十分な理由だよ。会社も誰も家族のことについて阻止できる権利もない」と、これまた驚きの回答が返ってきました。
仕事よりも何よりも最優先は家族なんです。夏休みに入ると、子供たちは子供同士で遊ぶのではなく、「サマーハウス」というところで家族みんなで過ごすといいます。そこにお爺ちゃん、おばあちゃんも集まり、2か月半ほど一緒に暮らす。この「サマーハウス」というのは、日本で言うところの別荘。人口に対して土地が広いからか、多くの一般家庭が持っているというから驚きです。
家族間での経済感覚も日本とは違うように感じました。例えば、家族の中で息子が「サマーハウス」、または自宅を購入したいとなった場合に、息子だけの経済力で買えない場合は、家族全員で出し合って購入するというのです。友人が面白い表現をしていました。「私たちはファミリーバンクがある」と。つまり家族の貯金は家族で使う、という感覚のようなんです。