国内

使用期限が切れた薬に注意 主成分が変質し効能は低下、悪影響の可能性も

(写真/GettyImages)

使用期限切れの薬は飲まない方が賢明(写真/GettyImages)

「先日、風邪気味で微熱があったのですが、このご時世だから病院に行くのは控えて、以前に買った市販薬をのんで早めに寝ようと思い、手に取りました。だけどいつどこで買ったものなのかまったく記憶にない。外箱もすでに処分してしまっていて、買ったのは3年前か、それとも5年前か……。これまで副作用を気にすることはあっても、“鮮度”についてはきちんと考えたことがなかったことに、いまさらながら思い至りました」

 そう話す主婦の工藤真紀子さん(50代・仮名)は、迷った末にドラッグストアで新しい薬を購入したという。ナビタスクリニック川崎の内科医・谷本哲也さんが言う。

「スーパーで食品を選ぶときは“賞味期限が切れていないか”“産地はどこか”と気にする半面、薬のことになると無条件に信頼し、疑問を持たずにのんでいる人がほとんどです。しかし薬は、原料を仕入れ、それを工場で加工して製造する加工食品とまったく一緒。古くなれば成分は変化し、効能は落ち、場合によっては安全性さえ不安視されます」

 新型コロナが再びまん延し、薬に頼る比重が増えたいま、その鮮度や産地がどれほど重要か改めて知っておくべきだ。

古いアスピリンは主成分が変質

 そもそも薬の保存期間と効能にはどんな関係があるのか。静岡や神奈川などを中心にポプラ薬局を展開する薬剤師の小島真さんが解説する。

「市販薬の場合、外箱に書かれている『使用期限』を過ぎると薬の成分が変質し、効果が薄れていきます。万人に向けて作られた市販薬は、基本的に処方薬よりも効き目が薄く、副作用も少ないため、使用期限を過ぎても体に大きな害を及ぼすことは少ないと考えられます。しかし効果が弱まった薬をのめばそれだけ体調の回復は遅くなり、変質した主成分が健康に悪影響を及ぼす可能性を示唆するデータもあります」

 国際未病ケア医学研究センター長で医師の一石英一郎さんは、特に「アスピリン」が主成分の解熱鎮痛剤に注意すべきだと指摘する。

「市販の解熱鎮痛剤に使われることが多いアスピリンは、使用期限を過ぎると強い副作用が生じる可能性があります。主成分である『アセチルサリチル酸』が、刺激性の物質である『サリチル酸』に変質し、胃もたれや胃痛など胃腸障害の原因になるためです。最近は、新型コロナ対策で解熱鎮痛剤をまとめ買いしている人もいますが、推奨できません」

 市販薬には消費期限が明記されている一方、処方薬には記載がない。いつまでにのみ切れば、効果を最大限取り込むことができるのか。

「処方薬の消費期限の目安は、未開封のもので3〜5年です。医療機関で出される薬は、厳しい保存試験をクリアしているので、市販薬よりも使用期限は長いのです。ただし、処方薬は病院を受診したときの症状に合わせて医師が選んでいるため、数年単位で保存せずにすぐにのみ切るべきです」(一石さん)

 実際、処方された薬をのみ切れない「薬ののみ残し」が大きな問題になっており、厚生労働省の調査によれば、5割以上の患者が薬を余らせた経験があり、約9割の薬局でのみ残しがある患者を抱えていることが明らかになっている。前出の谷本さんも声を揃える。

「処方箋に書かれた用法用量に従って日数分までにのむのが大前提。余ったからといって保管しないでください。特に処方薬の場合、製造後間もない“新鮮な薬”ではなく、在庫として残っているすでにやや古くなったものが出されている可能性もある。当初の服薬予定を大幅に超えると、期限切れのものをのむ羽目になるかもしれません。

 期限が切れた後の副作用が有名なのは、市販薬と同様、解熱鎮痛剤のアスピリン。また、一部の抗生物質も、古いものを服用すると貧血のリスクが上がるとされています」

 注意すべきはのみ薬だけではない。二本松眼科病院の眼科専門医・平松類さんが指摘する。

「目薬は光を浴びると変質しやすく、遮光が必要なものが多い。未開封のまま保存し、期限内に使っているつもりでも、遮光せずに保管していたせいで効き目が落ちていることもあります。保存方法が悪かったせいで、効果がなくなっている目薬を使っている人は意外と多い。

 なかでも注意が必要なのは、緑内障の目薬です。患者は処方された点眼薬を用量を守って使っているのに、保存方法が悪く効き目が落ちているため、一向に症状が改善せずに視野が悪化し、手術寸前まで進行してしまったケースすら存在します」

(写真/GettyImages)

点眼薬の保存期間にも注意(写真/GettyImages)

 つまり、気がつかないうちに失明すらしかねないということ。開封後の目薬の保存はさらに注意が必要だ。

「開封後の期限は長くても1か月だと考え、使い切るか廃棄するかしてください。点眼時、空気中の雑菌が容器内に入り込むうえ、水分が揮発して防腐剤の濃度が上がって成分が変質します。

 特に夏場のこの時期は要注意。バッグに入れて炎天下の中で持ち歩いたり、高温多湿の車内に放置したりするとすぐに鮮度が落ちます。それどころか場合によっては細菌感染で目の炎症を起こす原因になることもあります」(平松さん)

 目薬はさしかたによっても鮮度が左右される。

「目尻にくっつけるようにしてさす人がいるが、細菌が容器に入りやすくなり、さらに期限が短くなります。うまくさせない場合、使い切りタイプの点眼薬を選ぶことも検討してほしい」(小島さん)

※女性セブン2022年8月11日号

海外産の薬にまつわる主なトラブル事例

海外産の薬にまつわる主なトラブル事例

それぞれの薬の鮮度と期限

それぞれの薬の鮮度と期限

ジェネリック薬の半分近くは海外産

ジェネリック薬の半分近くは海外産

薬の鮮度を落とさない保存方法のポイント

薬の鮮度を落とさない保存方法のポイント

関連記事

トピックス

大谷の母・加代子さん(左)と妻・真美子さん(右)
《真美子さんの“スマホ機種”に注目》大谷翔平が信頼する新妻の「母・加代子さんと同じ金銭感覚」
NEWSポストセブン
二階俊博・元幹事長の三男・伸康氏が不倫していることがわかった(時事通信フォト)
【スクープ】二階俊博・元自民党幹事長の三男・伸康氏が年下30代女性と不倫旅行 直撃に「お付き合いさせていただいている」と認める
NEWSポストセブン
雅子さまにとっての新たな1年が始まった(2024年12月、東京・千代田区。写真/宮内庁提供)
《雅子さま、誕生日文書の遅延が常態化》“丁寧すぎる”姿勢が裏目に 混乱を放置している周囲の責任も
女性セブン
M-1王者であり、今春に2度目の上方漫才大賞を受賞したお笑いコンビ・笑い飯(撮影/山口京和)
【「笑い飯」インタビュー】2度目の上方漫才大賞は「一応、ねらってはいた」 西田幸治は50歳になり「歯が3本なくなりました」
NEWSポストセブン
司忍組長も姿を見せた事始め式に密着した
《山口組「事始め」に異変》緊迫の恒例行事で「高山若頭の姿見えない…!」館内からは女性の声が聞こえ…納会では恒例のカラオケ大会も
NEWSポストセブン
M-1での復帰は見送りとなった松本(時事通信フォト)
《松本人志が出演見送りのM-1》今年の審査員は“中堅芸人”大量増へ 初選出された「注目の2人」
NEWSポストセブン
浩子被告の顔写真すら報じられていない
田村瑠奈被告(30)が抱えていた“身体改造”願望「スネークタンにしたい」「タトゥーを入れたい」母親の困惑【ススキノ首切断事件】
NEWSポストセブン
「好きな女性アナウンサーランキング2024」でTBS初の1位に輝いた田村真子アナ(田村真子のInstagramより)
《好きな女性アナにランクイン》田村真子、江藤愛の2トップに若手も続々成長!なぜTBS女性アナは令和に躍進したのか
NEWSポストセブン
筑波大学・生命環境学群の生物学類に推薦入試で合格したことがわかった悠仁さま(時事通信フォト)
《筑波大キャンパスに早くも異変》悠仁さま推薦合格、学生宿舎の「大規模なリニューアル計画」が進行中
NEWSポストセブン
『世界の果てまでイッテQ!』に「ヴィンテージ武井」として出演していた芸人の武井俊祐さん
《消えた『イッテQ』芸人が告白》「数年間は番組を見られなかった」手越復帰に涙した理由、引退覚悟のオーディションで掴んだ“準レギュラー”
NEWSポストセブン
10月1日、ススキノ事件の第4回公判が行われた
「激しいプレイを想像するかもしれませんが…」田村瑠奈被告(30)の母親が語る“父娘でのSMプレイ”の全貌【ススキノ首切断事件】
NEWSポストセブン
12月6日に急逝した中山美穂さん
《追悼》中山美穂さん、芸能界きっての酒豪だった 妹・中山忍と通っていた焼肉店店主は「健康に気を使われていて、野菜もまんべんなく召し上がっていた」
女性セブン