事件直前に関係者が揃った写真。後列左から2番目が河本大作、その右後ろが東宮鐵男。前列にいる中国人の苦力はこの後、犯人偽装のため殺された
張作霖爆殺事件は、満州地域で大きな勢力となっていた奉天派の排除を狙った関東軍の謀略だったとされる。だがしかし、事件後、日本への復讐心に燃える息子の学良は国民党軍の指揮下に入った。蒋介石は直接手を下すこともなく、事実上の中国統一を果たしたのである。このこと自体が、爆殺事件の真相を能弁に語っているのではないだろうか。
東宮は、1937年11月14日、浙江省で戦死。佐々木は敗戦後ソ連軍の捕虜となった後中国に引き渡され、1955年撫順戦犯管理所で死亡する。
東宮日誌「消えた23日間」はまだどこかに眠っているのだろうか。
(了。前編から読む)
【プロフィール】
牧久(まき・ひさし)/ジャーナリスト。1941年(昭和16年)、大分県生まれ。1964年(昭和39年)日本経済新聞社入社、東京本社社会部に所属。サイゴン・シンガポール特派員、1989年(平成元年)東京社会部長。その後日経新聞副社長を経て、テレビ大阪会長。著書に『不屈の春雷 十河信二とその時代』『満蒙開拓、夢はるかなり』(以上ウェッジ)、『昭和解体 国鉄分割・民営化30年目の真実』(講談社)、『暴君 新左翼・松崎明に支配されたJR秘史』(小学館)。最新刊は、『転生 満州国皇帝・愛新覚羅家と天皇家の昭和』(同)。
※週刊ポスト2022年8月19・26日号