ライフ

【新刊】朝井リョウの書き下ろしエッセイ『そして誰もゆとらなくなった』など4冊

恥ずかしさを振り切る力、破壊的。書くって自己セラピーなのかも

恥ずかしさを振り切る力、破壊的。書くって自己セラピーなのかも

 各地で厳しい残暑が続くこの季節。エアコンが効いた涼しい部屋で読みたいおすすめの新刊4冊を紹介する。

『そして誰もゆとらなくなった』/朝井リョウ/文藝春秋/1540円
500枚の書き下ろしエッセイ。ゆとり世代の著者が“ゆとらない”個人的事情を克明に書く。それは自分では制御できない括約筋事情。大尊敬する上司の送別会での惨事(可哀想で泣きました)、ロスの友人宅での深夜の突発事(袋の捨て場に気をもみました)。取材する皆さん、ぜひ次の言葉を最初にかけましょう。「朝井さんいつでもダッシュOKです。ただし戻って来て下さいね」。

パパ活、浮気の制裁、隠し撮り動画。大人も子供もIT無しではいられない

パパ活、浮気の制裁、隠し撮り動画。大人も子供もIT無しではいられない

『#真相をお話しします』/結城真一郎/新潮社/1705円
ITがもたらした現代の事象をミステリーに仕立てる。家庭教師派遣の下調べで一軒家を訪れた(少し鈍い)東大生が事件に遭遇する「惨者面談」、マッチングアプリで出会う中年男と女の「ヤリモク」(ヤルのが目的の意)、精子提供という善意が不都合な真実をあぶり出す「パンドラ」、自然豊かな島に移住してきた子供達の「#拡散希望」など、5編とも軽やかな文体で快読する。

よく知る童話の主人公達に、ミステリーという魔法の粉をかける巧緻

よく知る童話の主人公達に、ミステリーという魔法の粉をかける巧緻

『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』/青柳碧人/双葉文庫/770円
赤ずきんが旅の途中で出くわす事件を解決していく。西洋童話「シンデレラ」「ヘンゼルとグレーテル」「眠り姫」などの愛すべき主人公達が腹に一物ある存在として登場する黒さに笑いつつ、ミステリーとしての結構も楽しめるのがミソ。圧巻は赤ずきんの旅の目的が明らかになる最終章「マッチ売りの少女」。映画化され来年ネットフリックスで世界に配信される。その前にご一読を。

消費者としての便利に負けて、労働者や納税者の視点を忘れていませんか?

消費者としての便利に負けて、労働者や納税者の視点を忘れていませんか?

『潜入ルポ アマゾン帝国の闇』/横田増生/小学館新書/1320円
出版界では単行本を新書にして新しい読者を獲得するのがトレンド。本書も2019年刊の単行本を改題する。この2年コロナ禍の巣ごもり需要もあってアマゾンは絶好調。最近では「ルンバ」も買収した。どこまで巨大化する? でも秘密主義、劣悪な労働環境、中小出版社を潰しかねない手の平返し、脱税と紙一重の租税回避など暗部は暗部のまま。夢中で読み耽る問題提起の書だ。

文/温水ゆかり

※女性セブン2022年9月8日号

関連記事

トピックス

硬式野球部監督の退任が発表された広陵高校・中井哲之氏
【広陵野球部・暴力問題で被害者父が告白】中井監督の退任後も「学校から連絡なし」…ほとぼり冷めたら復帰する可能性も 学校側は「警察の捜査に誠実に対応中」と回答
NEWSポストセブン
隆盛する女性用ファンタジーマッサージの配信番組が企画されていたという(左はイメージ、右は東京秘密基地HPより)
グローバル動画配信サービスが「女性用ファンタジーマッサージ店」と進めていた「男性セラピストのオーディション番組」、出演した20代女性が語った“撮影現場”「有名女性タレントがマッサージを受け、男性の施術を評価して…」
NEWSポストセブン
『1億2千万人アンケート タミ様のお告げ』(TBS系)では関東特集が放送される(番組公式HPより)
《「もう“関東”に行ったのか…」の声も》バラエティの「関東特集」は番組打ち切りの“危険なサイン”? 「延命措置に過ぎない」とも言われる企画が作られる理由
NEWSポストセブン
海外SNSで大流行している“ニッキー・チャレンジ”(Instagramより)
【ピンヒールで危険な姿勢に…】海外SNSで大流行“ニッキー・チャレンジ”、生後2週間の赤ちゃんを巻き込んだインフルエンサーの動画に非難殺到
NEWSポストセブン
〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
NEWSポストセブン
Benjamin パクチー(Xより)
「鎌倉でぷりぷりたんす」観光名所で胸部を露出するアイドルのSNSが物議…運営は「ファッションの認識」と説明、鎌倉市は「周囲へのご配慮をお願いいたします」
NEWSポストセブン
逮捕された谷本容疑者と、事件直前の無断欠勤の証拠メッセージ(左・共同通信)
「(首絞め前科の)言いワケも『そんなことしてない』って…」“神戸市つきまとい刺殺”谷本将志容疑者の“ナゾの虚言グセ”《11年間勤めた会社の社長が証言》
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“タダで行為できます”の海外インフルエンサー女性(26)が男性と「複数で絡み合って」…テレビ番組で過激シーン放送で物議《英・公共放送が制作》
NEWSポストセブン
ロス近郊アルカディアの豪
【FBIも捜査】乳幼児10人以上がみんな丸刈りにされ、スクワットを強制…子供22人が発見された「ロサンゼルスの豪邸」の“異様な実態”、代理出産利用し人身売買の疑いも
NEWSポストセブン
谷本容疑者の勤務先の社長(右・共同通信)
「面接で『(前科は)ありません』と……」「“虚偽の履歴書”だった」谷本将志容疑者の勤務先社長の怒り「夏季休暇後に連絡が取れなくなっていた」【神戸・24歳女性刺殺事件】
NEWSポストセブン
(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン