忘れられない思い出のコロッケ(イメージ)

忘れられない思い出のコロッケ(イメージ)

校則破りと担任教師の思い出

 それはある寒い冬の昼休みのことだった。

「俺たちは近くの揚げ物屋でコロッケを買っては、昼にパンに挟んで食べていた。ある日、それを先生に見つかった。逃げながらパンを口に押し込んで証拠隠滅を図ったが、数人が捕まった」

 彼の通う中学は買い食いが禁止。だが彼らは授業を抜け出し、買いに行っていたのだ。

 午後の授業が始まる前、幹部を含めた6人が職員室に呼ばれ、会議室に連れていかれた。怒られると思いきや、テーブルの上にはすさまじい量の揚げ物が山ほどのっていたという。

「午後の授業は出なくていい。そんなに好きなら、コソコソ食べずに此処で食べなさい」、担任の先生は彼らにそう言い放った。

「1人当たりとんかつ3枚、コロッケ、イカフライ、ハムカツ、メンチカツ、アジフライにカキフライ。とにかくとんでもない量を前にして、2人はすぐさま謝り解放されたが、残り4人は夜の7時過ぎまで食べさせられた」(幹部)

 他の先生たちの対応はというと、ほとんどの先生が会議室を覗きにきては、「おーうまそうだな。俺たちも食べたいよ」「私も食べたいな」と冷やかしたり、「1つ残さず食えよ、でないと帰れないぞ」と脅かしたりしたという。今とは時代が違ったのだ。

 学校が戸締りの時間になった時、担任の先生は彼らに「残った物を持って帰るか、気持ちを踏みにじり、反省する気のない者は焼却炉に捨てなさい」と言った。

「4人のうち2人は親に知らされ撃沈し、謝った。残った物は持って帰っていった。俺ともう1人は謝りもせず、焼却炉に捨てに行った」

 雪が降る寒い夜、焼却炉に食べ物を捨てる2人の姿を見て、担任の先生は大声を出して泣いていたという。

 担任の先生は20代半ばの女性。幹部が後で他の先生に聞いたところ、自分のお金で揚げ物屋にある物をほとんど買ってきていたのだ。

「次の日、他の先生から思い切りビンタされた。今なら事件になるが、こんな遊び心がある先生はもういないだろう。今思い出しても、楽しくも申し訳なくもあり、一番の思い出だ」(幹部)

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