ライフ

男子トイレで清掃員の女性へ向けられる利用者からのハラスメント発言は少なくない

男子トイレの清掃も女性清掃員が担当することが多い(イメージ)

男子トイレの清掃も女性清掃員が担当することが多い(イメージ)

 かつて大会社を舞台にしたドラマや映画、漫画などでときどき見られた設定に、お掃除のおじいさん(おばあさん)だと思っていたら、その会社で一番偉い人(創業者や社長など)が、社員の本音を探るために清掃員のふりをしていた、というものがあった。いま現実に、そういった隠密行動をとる社長はいないだろうが、トイレや更衣室の中で社員の本音が現れやすいのは変わらず、今では契約の清掃スタッフに本音がぶつけられている。ライターの森鷹久氏が、ハラスメントに直面する真面目に仕事に取り組む清掃スタッフたちの悩みをレポートする。

 * * *
「仕事だと割り切ろうと思っても、どうしても納得できない。余り言いたくありませんが、セクハラにパワハラ、年齢に対するハラスメント、そのすべてを受けていると思っています」

 時折深く息を吐きつつ、自身が置かれた状況を語るのは、都内のビルメンテナンス系会社で清掃員として働く倉田良子さん(仮名・50代)。以前は、都内繁華街にある飲食店の厨房で長く働いていたが、コロナ禍のあおりで店は閉店。転職を余儀なくされ、現在の会社でパートとして働くようになったが、最初に命じられたのは、都内の大手企業本社ビルに常駐し、館内の清掃全般を行う業務だった。

「上司は開口一番“おばちゃんだから男子トイレ頼むね”と言ってきたんです。確かに業務の中にはトイレの清掃もあって、女性トイレも男性トイレも、なぜかすべて女性スタッフがやることになっていました。そして、男子トイレの業務は、若い女性はできるだけ入らない、そういう決まりでした」(倉田さん)

 男性だから女性だからといって、与えられる業務に差が出てはならないが、確かに女性トイレの清掃員が男性だと抵抗があるだろう。でも、女性清掃員が男子トイレに入るのは、逆のケースに比べると許容されていることが多い。そして、現場の女性スタッフを最も苦しめているのが、トイレの男性利用者による、女性スタッフへの言動だ。

「トイレをされているときに、私たちが横で作業をしていると、こちらをチラチラ見たり、見せつけるようにチャックを下ろしたり、女性の前で用を足すなんて、と笑いながら入ってくる人もいます。こちらはあくまで仕事として、下を向いて“失礼します”と、黙々作業をするだけ。みっともなくて恥ずかしくて悔しくて…」(倉田さん)

 倉田さんと同じ部署には男性スタッフもいるが、なぜか喫煙所や給湯室、トイレ掃除はすべて女性スタッフの業務として固定されている。さらに倉田さんが驚いたのは、女性スタッフの全員がそのことを不満に思っているのに、誰も言い出さずに我慢していること。年齢の近い同僚も「本音は嫌、悔しい」と言うが、仕事だから仕方がないと皆あきらめているのだという。

 また、人手不足のためなのか、稀に、若い女性スタッフが、男性トイレの清掃をするという事態も起きている。倉田さんと同じ会社に所属し、神奈川県内にある大規模商業施設に常駐する脇山佳奈さん(仮名・20代)は、ある経験をして以降、恐怖で男子トイレの清掃ができなくなった。

関連記事

トピックス

麻原が「空中浮揚」したとする写真(公安調査庁「内外情勢の回顧と展望」より)
《ホーリーネームは「ヤソーダラー」》オウム真理教・麻原彰晃の妻、「アレフから送金された資金を管理」と公安が認定 アレフの拠点には「麻原の写真」や教材が多数保管
NEWSポストセブン
”辞めるのやめた”宣言の裏にはある女性支援者の存在があった(共同通信)
「(市議会解散)あれは彼女のシナリオどおりです」伊東市“田久保市長派”の女性実業家が明かす田久保市長の“思惑”「市長に『いま辞めないで』と言ったのは私」
NEWSポストセブン
左から広陵高校の34歳新監督・松本氏と新部長・瀧口氏
《広陵高校・暴力問題》謹慎処分のコーチに加え「残りのコーチ2人も退任」していた 中井監督、部長も退任で野球経験のある指導者は「34歳新監督のみ」 160人の部員を指導できるのか
NEWSポストセブン
松本智津夫・元死刑囚(時事通信フォト)
【オウム後継「アレフ」全国に30の拠点が…】松本智津夫・元死刑囚「二男音声」で話題 公安が警戒する「オウム真理教の施設」 関東だけで10以上が存在
NEWSポストセブン
二刀流復帰は家族のサポートなしにはあり得なかった(getty image/共同通信)
《プールサイドで日向ぼっこ…真美子さんとの幸せ時間》大谷翔平を支える“お店クオリティの料理” 二刀流復帰後に変化した家事の比重…屋外テラスで過ごすLAの夏
NEWSポストセブン
9月1日、定例議会で不信任案が議決された(共同通信)
「まあね、ソーラーだけじゃなく色々あるんですよ…」敵だらけの田久保・伊東市長の支援者らが匂わせる“反撃の一手”《”10年恋人“が意味深発言》
NEWSポストセブン
鉄板焼きデートが目撃されたKing & Princeの永瀬廉、浜辺美波
《デートではお揃い服》お泊まり報道の永瀬廉と浜辺美波、「24時間テレビ」放送中に配慮が見られた“チャリT”のカラー問題
NEWSポストセブン
8月に離婚を発表した加藤ローサとサッカー元日本代表の松井大輔さん
《“夫がアスリート”夫婦の明暗》日に日に高まる離婚発表・加藤ローサへの支持 “田中将大&里田まい”“長友佑都&平愛梨”など安泰組の秘訣は「妻の明るさ」 
女性セブン
経済同友会の定例会見でサプリ購入を巡り警察の捜査を受けたことに関し、頭を下げる同会の新浪剛史代表幹事。9月3日(時事通信フォト)
《苦しい弁明》“違法薬物疑惑”のサントリー元会長・新浪剛史氏 臨床心理士が注目した会見での表情と“権威バイアス”
NEWSポストセブン
海外のアダルトサイトを通じてわいせつな行為をしているところを生配信したとして男女4人が逮捕された(海外サイトの公式サイトより)
《公然わいせつ容疑で男女4人逮捕》100人超える女性が在籍、“丸出し”配信を「黙認」した社長は高級マンションに会社登記を移して
NEWSポストセブン
麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
「同棲していたのは小柄な彼女」大麻所持容疑の清水尋也容疑者“家賃15万円自宅アパート”緊迫のガサ当日「『ブーッ!』早朝、大きなクラクションが鳴った」《大家が証言》
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(X、時事通信フォト)
大麻成分疑いで“ガサ入れ”があったサントリー・新浪剛史元会長の超高級港区マンション「かつては最上階にカルロス・ゴーンさんも住んでいた」
NEWSポストセブン