主演映画『トップガン マーヴェリック』が大ヒットとなったトム・クルーズ(60才)。長きにわたって映画界のトップを走り続けるトム・クルーズはどんな人物なのか。決して恵まれていたとは言い難い幼少期から振り返る。
映画に救われた不遇の少年時代
光り輝くような笑顔がチャームポイントのトム・クルーズだが、デビューまでにはさまざまな苦労があったという。
彼の通訳を務め、30年以上の交流がある映画字幕翻訳家の戸田奈津子さんは、次のように証言する。
「子供時代は決して幸せな家庭環境ではなく、両親は12才のときに離婚。お父さんは音信不通となり、お母さんが女手一つで育ててくれて、彼自身も子供の頃からアルバイトをしていました。
その頃、テレビで昔の映画を見るのが唯一の楽しみだったようです。だからこそ、いまも彼は映画を作ることが何よりも大好きなのでしょう」(戸田さん)
19才でデビューした後も長らく父親については口にしていなかったが、2010年、米雑誌『エスクァイア』で初めて語っている。
その記事では、両親の離婚後、父親からの援助は何もなかったが、トムは父親を恨むことはなかったという。その後、30才を前に、病に伏せっていた父親と再会。そのときの心境を「彼は人生にいっぱいいっぱいになっていたんだと思う」と語っている。
トムの苦労は家庭環境だけではなかった。子供の頃から難読症に悩まされていた。トムを40年近く取材し、20回以上インタビューしてきた在米映画ジャーナリストの中島由紀子さんが、次のように語る。
「7才で難読症の診断を受け、ずいぶん苦しんだと語っています。難読症はいまでこそ治療の方法がありますが、以前は学習能力欠陥などといわれていました。本の内容も読んでもらえば理解できるのに、いざ自分で読もうとすると、文字が逆さまに見えて読めない。学校の宿題は、お母さんが声に出して読み、それをトムが理解し、解答を書くという方法でしていたんです」(中島さん・以下同)
この病気は、自らの努力によってその後に克服している。
「ある教育プログラムによって助けられた、と話してくれたことがありました。その苦労や経験を生かして同じ難読症で苦しむ子供たちを助けていきたいと、熱心に話していましたね」