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柔道・井上康生の亡くなった父・明さん秘話 アテネ五輪で敗北の夜、息子に告げた「逃げるな」の喝

 
井上康生(左、時事通信フォト)を見守り続けた父・明氏(筆者撮影)

井上康生(左、時事通信フォト)を見守り続けた父・明氏(筆者撮影)

 日本柔道界のレジェンドにして、昨年の東京五輪では5個もの金メダルを獲得した男子チームの監督を務めた井上康生氏(44)が自身のブログにて、父・明氏が9月4日に亡くなっていたことを報告した。享年75。柔道家にして警察官だった明氏は、三男の康生氏をはじめ兄弟に柔道を指導し、次兄・智和氏(46)を国内の100キロ級王者に、そして康生氏をシドニー五輪100キロ級金メダリストに育て上げた。

 康生氏はブログにこう綴っている。

〈父は柔道をこよなく愛し、特に我々兄弟は多くの愛情と情熱を持って指導を頂きました。今の自分達がいるのは、父の存在なくしてありえませんでした。また、父は大変頑固であり、わがままでもありましたので、多くの方にご迷惑をおかけしたのではないかと心配しております。しかし、人情味溢れ、皆様から親しまれる性格も持ち合わせておりました。我々はそんな父、師が大好きでしたし、心から尊敬しておりました」

 私事で恐縮だが、同年代の筆者も中学時代に井上一家と同じ宮崎で柔道に励んだひとりだった。恥ずかしい成績しか残せなかったが、所属した中学校の柔道部は県下一の強豪だった。そのライバル校に康生氏の兄・智和氏がいたために、強烈な印象を残す明氏の存在は当時から知っていた。

 数多の柔道家を輩出した宮崎の名門道場「静充館」で指導をしていた明氏は端から見ても頑固一徹で厳しく、不甲斐ない柔道をすれば周囲の目を気にすることなく鉄拳制裁もいとわなかった。

 そんな父を道場では師として「先生」と呼んでいた康生氏は、小学生の頃からタイトルを総なめにした。いつしか「山下(泰裕)2世」と呼ばれ、その熊本の先人と同じ東海大相模、東海大を進路に選ぶ。宮崎を離れても康生氏と明氏の師弟関係は続き、1999年に全日本選抜体重別選手権で敗れたあと、会場の外の路上で正座をさせ、長時間にわたって“説教”した逸話は有名だ。

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