9月27日の安倍晋三元首相の国葬が目前となった。会場となる日本武道館や靖国神社ではすでに警察官が巡回を始め、警備体制が敷かれている。一方、国内外の要人が滞在予定の高級ホテルでは対応に大きな差が出ていた。
海外からの参列者は約700人と報じられている。どのホテルに滞在するかは明かされていないが、武道館にアクセスがいいパレスホテル(千代田区丸の内)や帝国ホテル(千代田区内幸町)は重点警備、通行止めの区域に位置することもあり、多くの要人が宿泊するとみられている。
帝国ホテルはHPに〈故 安倍晋三元首相の「国葬儀」に伴うお知らせ〉という題名で〈国葬儀前後の期間は、ホテル敷地内の安全強化のため非常に厳しい警備態勢が敷かれる予定となっております〉と記載している。
しかし、まだ外国からの要人も到着していないためか、平時の対応のようだ。9月21日午後、パレスホテルと帝国ホテルを訪れたが、建物の周りに警察官や警察車両は見受けられず。ホテルの入り口も特に荷物検査などなくすんなり入れた。ホテル内のロビーやフロント周辺にも警官の姿は無し。利用客に話を聞いても「いつも通りですね」との声だった。
対照的なのが、港区虎ノ門にあるオークラ東京(旧・ホテルオークラ東京)だった。こちらも帝国ホテル同様、HPで〈ホテル館内および周辺道路においても、非常に厳しい警備体制が敷かれることが予想されます〉という案内を出している。
同じく21日午後、オークラに行ってみたところ霊南坂からホテル方面に北上する、神霊教本部教会より少し手前の道で車両検問が行なわれていた。1台1台ではなく不審な車両を呼び止める形だったが、少なからず交通にも影響が出ていた。近くの企業で働く会社員はこう語る。
「検問は昨日(9月20日)からだったと思います。急に厳しくなりました。警官は車だけでなく通行人にも厳しい視線を送っています。この辺りの検問は記憶にないですね」
なぜオークラ周辺に厳重な警戒態勢が敷かれているのか。その答えはホテルの目の前の建物にあるようだ。ホテル正面玄関の向かいにはアメリカ大使館があり、入り口のポリスボックスには警官1人が常駐、少し北側には装甲車も1台待機していた。
ホテル正面玄関にも警官が1人、オークラ庭園にも1人、裏手の入り口にも2人の警官がいて、ホテルを囲む形で警備が行なわれている。オークラ周辺を車でよく通るというタクシー運転手はこう語る。
「9月20日からオークラに向かう細い道で、検問をやっていて驚きました。普段だとこんな道では検問をやっていないので、これも国葬の影響ですね。パレスホテルや帝国ホテルの前も毎日通りますが、いまのところ(9月21日時点)で目立った検問や警備はないですね。オークラはアメリカ大使館が前にあるので、一足早く警備が強化されているのではないか」
米国はオバマ元大統領の参列は見送られたが、ハリス副大統領が前駐日米大使のハガティ上院議員(共和党)らを率いて来日する。バイデン政権は、ハガティ氏の参列で米国の弔意を超党派で示すことで、日米関係重視の姿勢を打ち出そうとしている。それに応えるための“特別対応”だったのか。