健康診断で尿酸値が高いと、痛風になっていなくても薬で数値を下げようとなることがあります。ところが、1回も発作を起こしていない人が、薬で尿酸値を下げて将来の痛風を予防できるとのエビデンスはありません。

 なおかつ、痛風発作を起こした直後に尿酸値を下げ始めると、発作を悪化させるとすら言われています。

 牡蠣や白子などを使った「痛風鍋」がありますが、プリン体が多い食品を1食分くらい食べても尿酸値は上がらないし、上がったからといって必ず痛風になるわけでもない。

 高齢者の多くが患う病気のそもそもの原因は、老化です。人は老いるもので、それを治療はできない。それなのに、何とかしようと頑張りすぎて患者に負担をかけるのは、医師としてどうなのか。

 私は医師と患者の「コミュニケーション」のあり方が重要だと考えます。血圧が高いとすぐに「減塩を」という医師もいますが、減塩で下がる血圧の数値はわずかなうえ、病気を予防する効果は確認できていません。油も同様で、「太る」「体に悪い」とされますが、炭水化物のほうが太りやすく、油はむしろ摂っていい。

 また、「数値」自体も、基準値で一括りにできない面があります。たとえ高くても、その人にとって安定する数値というものがある。患者さん自身が“医者を利用する”という考えを持ってもらえればと思っています。

※週刊ポスト2022年11月4日号

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