患者も“常識”を疑え
では、どうすれば患者さんは無駄な薬を飲まないようにできるのか。
それには、患者さん自身の意識の「アップデート」が必要です。
健康診断を受けて、医者に「数値が悪い」と言われたからとすぐに病院を受診し、薬を処方してもらう、というこれまでの流れから抜け出すということです。
そもそも健康診断の基準値が正しくて、それによって健康で長生きにつながるなら、なぜ今、男性と女性の「平均寿命」の差が広がっているのか、説明がつきません。
現在80代の人で、健康診断を毎年受けて、血圧が高ければ薬を飲んできた人は圧倒的に男性が多数です。かつて健康診断といえば、ほとんどが職場健診でしたから。
健診を受ける機会の少なかった女性より、長年受けてそれに合わせて薬を飲んできた男性のほうが長生きになって然るべきなのに、そうなっていない。つまり男女ともに平均寿命が延びたのは、健診のおかげなどではなく、栄養状態が改善したからにすぎません。
健診の数値が本当に自分の長生きや元気につながるのかを立ち止まって考えてみる。少しくらい数値が高いほうが元気で長生きできる事実をもっと見つめるようにする。そのように、医療の常識を疑う態度が必要かもしれない、ということです。
患者さんも情報を得られる今こそ、本当の健康について考え直す時代になっています。
※週刊ポスト2022年11月11日号