スポーツ

【ドキュメント戦力外通告】ノンテンダーから再起を期したソフトバンク・秋吉亮の本音

2017年WBCでは侍ジャパンの中継ぎも福岡ソフトバンクの秋吉亮(時事通信フォト)

2017年WBCでは侍ジャパンの中継ぎも福岡ソフトバンクの秋吉亮(時事通信フォト)

 公式戦最終戦でナインから胴上げされ、大歓声のなか球場を一周してファンとの別れを惜しむ──そんな “理想の最後”を迎えられるプロ野球選手は少ない。人知れずクビを告げられ、新たな道を模索する。「戦力外」となった男たちの物語をノンフィクションライターの柳川悠二氏がレポートする。【全3回の第2回。第1回から読む

 * * *

トライアウトは“区切り”

 この時期に戦力外となった選手への連絡ほど、気が引けるものはない。知らない番号からの着信は獲得を希望する球団からの連絡かと、心を躍らせる可能性があるからだ。

 2017年のWBCで侍ジャパンの中継ぎを務めた福岡ソフトバンクの秋吉亮(33)に取材のアポイントを入れると、電話越しに子供たちがはしゃぐ声が聞こえてきた。

 トライアウトに参加した選手の獲得を希望する球団は、5日以内に連絡する決まりがある。ちょうど連絡を入れた日が5日目だった。

「子供たちと公園で遊んでいました。“2度目”の戦力外ですから、落ち着いて過ごせています。トライアウトには、ひとつの区切りとして参加しました。持っている力を出して、話がなければ次の人生を考えます」

 昨年オフに、FA権を取得していた秋吉は西川遥輝(現東北楽天)や大田泰示(現横浜DeNA)と共に北海道日本ハムを「ノンテンダー」となった。日ハム残留の余地を残しながら他球団との交渉が可能となる馴染みのない契約だが、球団から残留交渉の話はなかった。

「結局、戦力外通告と同じですよね。僕自身は結果を残せていなかったので仕方ないですが、遥輝や泰示は試合に出続けていた。要は年俸の高い選手のクビをいきなり切ると印象が悪いから、ノンテンダーとしたのではないでしょうか(笑)」

 今季の開幕は独立リーグ・福井ネクサスエレファンツで迎えたものの、7月にソフトバンクと契約、NPBに返り咲いた。

 だが復帰後初登板で清宮幸太郎に2ランを浴び、次の登板でも得点を許してしまう。結局、一軍登板はこの2試合のみ。在籍3カ月で再び戦力外となってしまった。

「何も話はありませんが、独立リーグで野球を続けたい。コーチ兼任でもいい。自分は教えるのが大好きで、コーチの勉強もしたい。いずれにせよ、野球に携わる仕事がしたいです。独立なら空いた時間帯に副業のような形で、野球教室やユーチューブもできますから」

 381試合に登板した鉄腕はまだ錆びていない。

(第3回につづく。第1回から読む

【プロフィール】
柳川悠二(やながわ・ゆうじ)/1976年、宮崎県生まれ。ノンフィクションライター。法政大学在学中からスポーツ取材を開始し、主にスポーツ総合誌、週刊誌に寄稿。2016年に『永遠のPL学園』で第23回小学館ノンフィクション大賞を受賞。近著に『甲子園と令和の怪物』(小学館新書)

※週刊ポスト2022年12月2日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷翔平の妻・真美子さん(写真/AFLO)
《髪をかきあげる真美子さんがチラ見え》“ドジャース夫人会”も気遣う「大谷翔平ファミリーの写真映り込み」、球団は「撮らないで」とピリピリモード
NEWSポストセブン
第79回国民スポーツ大会の閉会式に出席された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月8日、撮影/JMPA)
《プリンセスコーデに絶賛の声も》佳子さま、「ハーフアップの髪型×ロイヤルブルー」のワンピでガーリーに アイテムを変えて魅せた着回し術
NEWSポストセブン
宮家は5つになる(左から彬子さま、信子さま=時事通信フォト)
三笠宮家「彬子さまが当主」で発生する巨額税金問題 「皇族費が3050万円に増額」「住居費に13億円計上」…“独立しなければ発生しなかった費用”をどう考えるか
週刊ポスト
畠山愛理と鈴木誠也(本人のinstagram/時事通信)
《愛妻・畠山愛理がピッタリと隣に》鈴木誠也がファミリーで訪れた“シカゴの牛角” 居合わせた客が驚いた「庶民派ディナー」の様子
NEWSポストセブン
米倉涼子(時事通信フォト)
「何か大変なことが起きているのでは…」米倉涼子、違約金の可能性を承知で自らアンバサダー就任のキャンセルを申し出か…関係者に広がる不安がる声
NEWSポストセブン
ドイツのニュルンベルクで開催されたナチ党大会でのヒトラー。1939年9月1日、ナチ・ドイツがポーランドに侵攻し、第二次世界大戦が勃発した(C)NHK
NHK『映像の世紀』が解き明かした第二次世界大戦の真実 高精細カラー化されたプロパガンダ映像に映る国民の本音、老いて弱りゆく独裁者の姿
週刊ポスト
大阪・関西万博を視察された天皇皇后両陛下(2025年10月6日、撮影/JMPA)
《2回目の万博で魅せた》皇后雅子さまの気品を感じさせるロイヤルブルーコーデ ホワイトと組み合わせて重厚感を軽減
群馬県前橋市の小川晶市長(共同通信社)
「ドデカいタケノコを満面の笑顔で抱えて」「両手に立派な赤ダイコン」前橋・小川晶市長の農産物への“並々ならぬ愛”《父親が農民運動のリーダー》
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(共同通信)
《やる気スイッチ講師がわいせつ再逮捕》元同僚が証言、石田親一容疑者が10年前から見せていた“事件の兆候”「お気に入りの女子生徒と連絡先を交換」「担当は女子ばかり」
NEWSポストセブン
滋賀県を訪問された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月7日、撮影/JMPA)
《再販後完売》佳子さま、ブラジルで着用された5万9400円ワンピをお召しに エレガントな絵柄に優しいカラーで”交流”にぴったりな一着
NEWSポストセブン
真美子さんと大谷が“即帰宅”した理由とは
《ベイビーを連れて観戦》「同僚も驚く即帰宅」真美子さんが奥様会の“お祝い写真”に映らなかった理由…大谷翔平が見計らう“愛娘お披露目のタイミング”
NEWSポストセブン
子宮体がんだったことを明かしたタレントの山瀬まみ
《山瀬まみが7ヶ月間のリハビリ生活》休養前に目撃した“スタッフに荷物を手伝われるホッソリ姿”…がん手術後に脳梗塞発症でICUに
NEWSポストセブン