スポーツ

【ドキュメント戦力外通告・諦めきれない男たち】退団会見で炎上、中日・平田の真意

退団会見の発言で思わぬ炎上を経験した中日の平田良介(時事通信フォト)

退団会見の発言で思わぬ炎上を経験した中日の平田良介(時事通信フォト)

 公式戦最終戦でナインから胴上げされ、大歓声のなか球場を一周してファンとの別れを惜しむ──そんな “理想の最後”を迎えられるプロ野球選手は少ない。人知れずクビを告げられ、新たな道を模索する。「戦力外」となった男たちの物語をノンフィクションライターの柳川悠二氏がレポートする。【全3回の第1回】

 * * *

「まだ第一線でやれる」

 プロ野球の世界において、自らの意思で「引退」を決断できる選手はほんの一握りだ。実績があり、本人が現役を続けられると思っていても多くの場合は「戦力外」を宣告され、居場所を失う。

 2022年のオフも、福岡ソフトバンクの松田宣浩(39)や巨人の山口俊(35)など、名だたる選手が自由契約となった。巨人への“再就職”が決まった松田のようなケースはまれで、扱いの難しい大物ベテランほど、現実は厳しい。

 退団会見での発言によって、思わぬ炎上を経験したのが中日の平田良介(34)だ。4度にわたってセ・リーグを制した落合博満政権時の主軸で、プロ17年目の今季も7月の阪神戦では150キロを超える直球を本塁打にした。だが10月に入って“血の入れ替え”を断行する立浪和義監督に呼ばれ、引退か自由契約か選択を迫られた。コーチ就任の打診などはなかった。

「自分の中では、現役続行で気持ちは固まっていた。去年患った病気(異型狭心症)も大丈夫ですし、ケガもない。まだまだ体も動きますし、第一線でやれる。ただ、家族があるので、一度話を持ち帰らせてもらいました」

 その後、球団代表との話し合いの中で、盛大な引退セレモニーが用意されないと知るや、10月4日の退団会見でその不満を爆発させた──報道ではそう伝わっている。真意は違う、と平田は言う。

「気持ちの浮き沈みがあり、辞めることも頭をよぎる中で、代表からこれ以上ないようなお見送りの道を提案されていたら、『辞めます』と口にしていたかもしれない。そう記者さんに話したら、前後をはしょられて、間違った伝わり方をしてしまった。17年間の現役生活でも特別な会見なのに、(炎上したことは)ショックでした」

 波紋が広がるや平田はSNSで釈明し、さらに自身のユーチューブのチャンネルで、改めて現役続行の意志を表明した。

「SNSをやっていない僕のファンは、記者会見で時が止まっている。そうしたファンに、今、何をしているのかを伝えたかったし、記者会見で伝えたかったことを自分の言葉で説明したかった」

 12球団合同トライアウトには「もう評価は終わっているはず」との理由から不参加だった。「ベテランとして若手に伝えられることがある」と平田は強調した。

 海外や国内独立リーグで野球を続ける考えはなく、希望はNPBの球団のみ。年内に話がなければ潔く引退するつもりだ。

「今年から現役ドラフトも開催されるので、例年よりチーム編成が遅れる可能性がある。でも期限を決めなければ次の人生に踏み出せませんから」

第2回に続く

【プロフィール】
柳川悠二(やながわ・ゆうじ)/1976年、宮崎県生まれ。ノンフィクションライター。法政大学在学中からスポーツ取材を開始し、主にスポーツ総合誌、週刊誌に寄稿。2016年に『永遠のPL学園』で第23回小学館ノンフィクション大賞を受賞。近著に『甲子園と令和の怪物』(小学館新書)

※週刊ポスト2022年12月2日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信フォト)
オフ突入の大谷翔平、怒涛の分刻みCM撮影ラッシュ 持ち時間は1社4時間から2時間に短縮でもスポンサーを感激させる強いこだわり 年末年始は“極秘帰国計画”か 
女性セブン
65歳ストーカー女性からの被害状況を明かした中村敬斗(時事通信フォト)
《恐怖の粘着メッセージ》中村敬斗選手(25)へのつきまといで65歳の女が逮捕 容疑者がインスタ投稿していた「愛の言葉」 SNS時代の深刻なストーカー被害
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
「はい!お付き合いしています」水上恒司(26)が“秒速回答、背景にあった恋愛哲学「ごまかすのは相手に失礼」
NEWSポストセブン