歩行補助ロボット「curara」を装着して、ホームから電車に乗り込む様子(撮影:小川裕夫)
当初のバリアフリー化は、とにかくハード面の改善が急がれた。歳月とともにバリアフリー化は進み、現在はソフト面でのバリア解消が目立つ。
そうした流れを受け、東急電鉄はアシストモーション社が開発するロボティックウェア「curara(クララ)」の導入を模索。今年11月から、長津田駅―こどもの国線間の駅構内や列車内およびこどもの国の園内で実証実験を開始した。
「こどもの国線を実証実験の場に選んだ理由は、混雑しにくい路線ということがあります。まずはcuraraを使って階段の上り下り、通路の歩行などを試しています。ほかの利用者やcuraraを使った利用者、お互いに支障が出ないようにしなければなりません」(同)
歩行補助ロボットには様々な機種があるが、モデルチェンジを重ねたcuraraは軽量化が図られ、実証実験で使われているモデルの重量は2キログラムを切った。そのため、持ち運びしやすく一人で簡単に着脱が可能になっている。こうした点から、例えば渋谷駅から乗車するときに駅で借り、長津田駅で下車する際に返却するという利用シーンも想定できる。
実用化を目指すのであれば、渋谷駅など混雑する場所でも実証実験をする必要はある。しかし、まだ実験が始まったばかりの段階で、いきなり渋谷駅で試すのはリスクが大きい。そうした理由から、こどもの国が実証実験の舞台に選ばれたことは納得ができる。
鉄道事業者の人手不足対策の面も
さらなるバリアフリーを目指したcuraraには、他方で東急電鉄の人手不足を解消したいという目的も含まれている。東急電鉄に限らず、近年の鉄道事業者は人手不足が深刻な問題になっているからだ。
東急電鉄では、電車の乗降だけでも1日に300件程度の介助業務が発生している。介助は東急職員が担当。先述したサービス介助士の資格取得も、鉄道輸送におけるサービス向上の取り組みの一環でもある。
そうした介助サービスの質向上に取り組んでいるものの、人手不足が深刻化すれば介助サービスそのものが覚束なくなる。永続的なサービスにしていくうえで、機械化できるところは機械化し、省力化によって人的リソースを生み出さなければならない。
とはいえ、機械化や省力化に取り組むためには、何よりも安全が第一でなければならない。システム変更や新たな機器を導入することで作業が格段に効率化できたとしても、安全が確認できなければそのシステムや機器は導入できない。
「まだcuraraは実証実験の段階です。導入の見通しどころか、次の実証実験の予定すら決まっていません」(同)といった具合に慎重な姿勢を崩さない。