「僕はアラン・J・パクラ監督の映画が大好きで、敵を監視したり潜入したりする人の抑圧された状況が物凄くセクシーというか、自分を隠し何者かを演じる、その虚構性とスリルにグッとくる。だから、それでいてエンタメ性もある小説を書きたいと思うんです」

 動画の男とジャクソンの何が似ているのかと問われ、キャプテンが直言を避ける程度には、現代はポリティカルにコレクトではある。

「だからこそ更新が必要。私はこんな差別発言をされた、だからつらいという従来のルートが、令和版だとこうなりますよって」

 認識は改まっても差別はなくならず、水面下に潜りがちなだけに、この痛快で今日的な文学は書かれた。性別や人種以前に、彼らが〈生きてるってこと〉、その手触りがただただ愛おしい快作だ。

【プロフィール】
安堂ホセ(あんどう・ほせ)/1994年東京都生まれ。『文藝』2020年秋季号の特集「覚醒するシスターフッド」に感激し、初小説「赤青坂黄色闇」を第58回文藝賞に応募。最終候補に残るが惜しくも落選。晴れて今年本作で同賞を受賞し、デビューを果たす。元々映画好きで、自ら制作も手がけたが、「1人で気が済むまで作れる表現の方が合っている気がして」シナリオから小説に移行。読書も昔から好きで、川上未映子、金原ひとみ、桐野夏生等、女性作家の作品を愛読。187cm、A型。

構成/橋本紀子 撮影/朝岡吾郎

※週刊ポスト2022年12月16日号

関連記事

トピックス

第一子を出産した真美子さんと大谷
《デコピンと「ゆったり服」でお出かけ》真美子さん、大谷翔平が明かした「病院通い」に心配の声も…出産直前に見られていた「ポルシェで元気そうな外出」
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
「王子と寝ろ」突然のバス事故で“余命4日”ののち命を絶った女性…告発していた“エプスタイン事件”【11歳を含む未成年者250名以上が被害に】
NEWSポストセブン
日曜劇場『キャスター』(TBS系)で主演を務める俳優の阿部寛
《キャスター、恋は闇…》看板枠でテレビ局を舞台にしたドラマが急増 顕著な「自己批判や自虐」の姿勢 
NEWSポストセブン
人気シンガーソングライターの優里(優里の公式HPより)
《音にクレームが》歌手・優里に“ご近所トラブル”「リフォーム後に騒音が…」本人が直撃に語った真相「音を気にかけてはいるんですけど」
NEWSポストセブン
世界中を旅するロリィタモデルの夕霧わかなさん。身長は133センチ
「毎朝起きると服が血まみれに…」身長133センチのロリィタモデル・夕霧わかな(25)が明かした“アトピーの苦悩”、「両親は可哀想と写真を残していない」オシャレを諦めた過去
NEWSポストセブン
キャンパスライフをスタートされた悠仁さま
《5000字超えの意見書が…》悠仁さまが通う筑波大で警備強化、出入り口封鎖も 一般学生からは「厳しすぎて不便」との声
週刊ポスト
事実上の戦力外となった前田健太(時事通信フォト)
《あなたとの旅はエキサイティングだった》戦力外の前田健太投手、元女性アナの年上妻と別居生活 すでに帰国の「惜別SNS英文」の意味深
NEWSポストセブン
エライザちゃんと両親。Facebookには「どうか、みんな、ベイビーを強く抱きしめ、側から離れないでくれ。この悲しみは耐えられない」と綴っている(SNSより)
「この悲しみは耐えられない」生後7か月の赤ちゃんを愛犬・ピットブルが咬殺 議論を呼ぶ“スイッチが入ると相手が死ぬまで離さない”危険性【米国で悲劇、国内の規制は?】
NEWSポストセブン
1992年にデビューし、アイドルグループ「みるく」のメンバーとして活躍したそめやゆきこさん
《熱湯風呂に9回入湯》元アイドル・そめやゆきこ「初海外の現地でセクシー写真集を撮ると言われて…」両親に勘当され抱え続けた“トラウマ”の過去
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:
【激太りの近況】水原一平氏が収監延期で滞在続ける「家賃2400ドル新居」での“優雅な生活”「テスラに乗り、2匹の愛犬とともに」
NEWSポストセブン
笑顔に隠されたムキムキ女将の知られざる過去とは…
《老舗かまぼこ屋のムキムキ女将》「銭湯ではタオルで身体を隠しちゃう」一心不乱に突き進む“筋肉道”の苦悩と葛藤、1度だけ号泣した過酷減量
NEWSポストセブン
折田楓氏(本人のinstagramより)
「身内にゆるいねアンタら、大変なことになるよ!」 斎藤元彦兵庫県知事と「merchu」折田楓社長の“関係”が県議会委員会で物議《県知事らによる“企業表彰”を受賞》
NEWSポストセブン