1986年に旧愛媛2区で初当選
──以降、政治経験の少ない若手が大量当選し、「チルドレン議員」がワイドショーを賑わせるようになりました。
「まっとうな人材が政界に来なくなりました。党の部会では若手が自分の姿をスマホで撮って、議論になると意見が少ない。
私が初めて衆院に通った頃は、大臣になるのに5期必要と言われて、勉強を積み重ねたもんです。先輩から『専門分野を2つつくれ』と。
私は財政・金融と商工関係をやって、大蔵政務次官、衆院大蔵委員長、財務副大臣と階段を上りながら、各省庁の同世代で優秀な官僚たちを集めて勉強会を続けてきました。その中から、20年間で8人の事務次官が出ました」
──政と官が切磋琢磨して、人材が育った。
「政治家は選挙で苦労している、官僚は安い給料で真夜中まで働いてるって、政と官がリスペクトし合って、いつも本音で語った。
ところが、公務員法改正で内閣人事局ができてから、政治家が人事権で官僚を抑え込んだから、彼らも正論を言えなくなった。
だから、やっていいことと悪いことがあるんだ。学問の自由や三権分立や立憲主義も、時の為政者が破ろうと言い出したら、みんな同調しちゃう。赤木俊夫さんや伊藤詩織さんの事件でも黙っちゃう。梶山静六さんや河本敏夫先生がご存命なら、私以上に猛反発したよ」
(第2回に続く)
【プロフィール】
村上誠一郎(むらかみ・せいいちろう)/衆院議員(自民党・当12)。1952年愛媛県生まれ。東京大学卒業後、河本敏夫(郵政相、通産相など)の秘書に。1986年に旧愛媛2区で初当選。自民党河本派に属し、2004年小泉内閣で初入閣(行政改革担当相など)。2010年高村派を退会し、無派閥に。安倍・菅両政権の方針に異論を唱え続け、「自民党のひとり良識派」の異名を取る。
【聞き手】
常井健一(とこい・けんいち)/1979年茨城県生まれ。ノンフィクション作家。朝日新聞出版を経て、フリーに。数々の独占告白を手掛け、粘り強い政界取材に定評がある。代表作『無敗の男』(文藝春秋)は大宅賞最終候補に。近著『おもちゃ 河井案里との対話』(同前)が講談社・本田靖春賞ノミネート。
※週刊ポスト2023年1月27日号