取材をした譲渡会は30分入れ替え制で、1回につき60人の参加者が集まった
殺処分数は減ってきているが…
そもそも保護犬・保護猫は、なぜ存在するのか。
「飼い主からの引き取り依頼や野犬の捕獲、業者や個人による多頭飼育崩壊などを理由に、自治体の動物愛護センターには、多くの犬や猫の相談が寄せられます。最近は特に、高齢の飼い主が老人施設に入所する際、自宅に置いていく飼育放棄が増えています。そういう子たちは、これまで殺処分の対象でした」
と話すのは、動物環境・福祉協会「Eva」の事務局長・松井久美子さんだ。
環境省の調べによると、1989年度までは、年間100万頭以上の犬や猫が殺処分されていた。しかし、保護団体の活動が浸透して動物の命に対する国民の意識も徐々に変わり、行政も2013年頃から「殺処分ゼロ」を掲げるようになった。そのため、2020年には2万3764頭まで殺処分数が激減した。その背景には、保護団体が引き取りに尽力し、譲渡会などを開いて新たな飼い主を見つける活動を続けてきたことが大きい。
「しかしいま、どこの保護団体も収容数がパンパンの状態。スタッフもボランティアなので、作業的にも金銭的にも負担が大きく、どこの団体も疲弊しているのが実情です」(松井さん・以下同)
行政施設で飼い主や引き取り先が見つからなければ、結局殺処分となる。殺処分の減少は、保護団体らの必死の努力で成り立っており、それに甘んじ、一生面倒をみる覚悟もないのに気軽にペットを飼うことは、言うまでもなくやめないといけないのだ。
飼い主になるには厳しい審査が!
殺処分を減らすため、私たちができることは、犬や猫をペットショップで買わず、保護犬・保護猫の新たな飼い主“里親”になることにある。「里親になるには、譲渡会や保護団体のシェルターを訪問するのが一般的。そこで、ペットが飼える住宅事情か、仕事や収入があるか、家族全員が賛成しているか、アレルギーはないか、留守がちでないかなどがヒアリングされます。
さらに、ほかの家族や先住動物との相性、猫なら完全室内飼いできるのかも確認され、問題がなければ、1匹3万〜5万円目安の譲渡金を支払って正式譲渡となります」
犬も猫も20年程度生きる。最期まで責任を持って飼育してもらうため、60才以上は譲渡を断られるケースも多い。とはいえ、60才以上で里親になりたい人が増えているのも事実だ。
「そういった状況を踏まえ最近では、里子をシニアの犬や猫に限定したり、子供の後見人をたてるなどの条件付きで譲渡する団体もありますから、相談してみてください」(大網さん・以下同)