しかし、中世の黒死病流行の悲劇は、血液に入ったペスト菌が肺で増殖し、高熱と共に血痰や喀血を伴う「肺ペスト」を引き起こしたことで、肺ペストに罹患すると多くの人は3日以内に死亡しました。さらに肺ペストはノミを介さず、肺炎を起こした人の咳やくしゃみによって人から人へ空気感染するようになり、これによって流行に拍車がかかりました。多くの古い村の名前が消えたのも黒死病時で、イギリスとフランスの百年戦争も休戦となりました。

 20世紀にはストレプトマイシンやテトラサイクリンの抗生物質の治療により、致死率は約1割に留められるようになっています。日本は島国で黒死病の惨禍を免れましたが、もしも流行していたなら室町時代以降の歴史も変わっていたのかもしれませんね。

 現在も、ペストは1類感染症です。

【プロフィール】
岡田晴恵(おかだ・はるえ)/共立薬科大学大学院を修了後、順天堂大学にて医学博士を取得。国立感染症研究所などを経て、現在は白鴎大学教授。専門は感染免疫学、公衆衛生学。

  1. ※週刊ポスト2023年2月24日号
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