長きにわたって“和食が健康的である”とされてきた理由の1つが、「日本人は欧米人よりも腸が長く、肉食は負担がかかる」というものだ。しかしこれも過去の常識に過ぎないようだ。
早稲田大学名誉教授で生物学者の池田清彦さんが言う。
「古来、肉食文化が浸透していた欧米人に比べて、魚や野菜、穀物をよく食べてきた日本人は腸が長いといわれてきましたが、実際には人種差はありません。日本消化器内視鏡学会が腸の長さを調べたところ、日本人と欧米人の腸の長さはほとんど変わらないことが明らかになったのです。つまり私たちも欧米人と同じように、もっと肉を食べても体に負担がかかることはないといえます」
とはいえ、一口に「肉」と言っても種類も部位も多岐にわたる。特に近年はジンギスカン専門店が乱立するなど“第四の肉”として羊肉がブームだ。アミノ酸の一種であり、脂肪燃焼効果の高い「L-カルニチン」が豊富でダイエット効果が見込めることがその理由だが、室井さんは「特別な健康効果はない」と否定する。
「海外の研究では、牛・豚・羊の赤身肉において健康に及ぼす影響にほとんど差はありません。羊肉が特別に優れているという結果はありませんし、『ヘルシーだから』といって率先して羊肉を好むような風潮もありません」(室井さん)
食事だけでは摂取しきれない成分をサプリメントで摂ることも一般化しつつあるが、その中には効果が期待できないものもある。
「“ひざ痛を緩和”が売り文句のグルコサミンやコンドロイチンなどのサプリメントは、胃腸で消化されるので、ひざまで届くことはまずあり得ない。口から摂取しても効果は期待できません。ブルーベリーに含まれるアントシアニンも視力回復にいいといわれますが、エビデンスはありません」(秋津さん)
サプリメントと同じくコンビニやドラッグストアで手に入るプロテインゼリーや野菜ジュースなどの栄養補助食品についても、牧田さんはかえって体に悪影響を及ぼすことがあると注意を促す。