10年後には古い建物も人口も減る一方、新しく建て替えられる建物は増えるだろう。このため、3分の1とはいかずとも、被害は確実に減るとみられる。だが中林さんは「被害が減るからといって安全というわけではない」と警鐘を鳴らす。
「予想される被害が約20万棟に減ったとはいえ、その中に含まれるのはあなたかもしれないということを忘れないでください。
10年後は確実に、いま以上に社会が高齢化しています。復旧や救援の人手は不足し、避難所に行っても世話をする人がいないかもしれない。自宅が壊れなくても、いまより10才年を取っていれば、けがをしていなかったとしても、避難すらできないかもしれません。10年後の高齢化社会では、建物を守るだけでなく、近隣住民と助け合う人間関係をつくっておけるかどうかが、大きな課題になるでしょう」
事実、地盤が弱く、被害想定も大きい下町では、住民の多くがその弱点を認識しており、地域ぐるみでの防災活動に余念がない。10年後はむしろ、震災の影響は下町よりも高層マンションや新興住宅地の方が大きいかもしれない。
まずは、自分の住んでいる自治体のウエブサイトにある「地震被害想定」を見て、危険度だけでなく、避難経路も確認すべきだ。建物が倒壊して道が塞がれたときはもちろん、近くで火災が起きていれば、風向きによって逃げられる方向は変わる。さまざまなシチュエーションを想定して、家族で話し合っておきたい。
「日本の木造建築の最新の耐震基準が定められたのは2001年、マンションなどは1981年です。それ以前に建てられた家に住んでいるなら、一度『耐震診断』を受けるべき。そうして、必要に応じて耐震改修を行いましょう。木造なら100万〜150万円で最低限の耐震改修はできます。いくら水や食料を備蓄しても、家がなくなっては意味がありません」
地震大国に住んでいることをいま一度思い出し「その日」に備えよう。
(了。第1回から読む)
※女性セブン2023年3月16日号