尾崎さんの取り組みによって飛来したアサギマダラ
地元住民も多数、会員となっている『防長の吉野をつくる会』は、25年間で3500本もの山桜を植樹したほか、祭りやウォーキングなどさまざまなイベントを企画実行している。尾崎さんがなかでも熱心に取り組んでいるのが、「金峰の里」と名付けられたオープンガーデンづくりだ。
一面に広がる休耕田を開拓し、ツツジや紫陽花など季節の花々を植えた。手作りのデッキやベンチを備え、春から秋まではコーヒーを飲みながら一息つけるスペースとなった。加えて、さらなる尾崎さんの奮闘により変化が訪れた。ここ数年、“旅するチョウ”として知られるアサギマダラが飛来するようになったのだ。
「アサギマダラはフジバカマの蜜を好むと知って、試しに植えてみたんです。すると秋には、花を咲かせたフジバカマに多数のアサギマダラが集まってきてくれました」(尾崎さん・以下「」同)
地元のテレビ局も取材に訪れ、周南市ではアサギマダラの飛来地として認知され始めている。尾崎さんは同時期に『金峰を歩こう』というウォーキングイベントを開催しており、参加者らは山あいの自然と風景、またアサギマダラの舞う姿を楽しむことができる。普段は静かな山間地に、多数の人が訪れる時期にもなっているという。
「たくさん人が来てくれるようになりました。10月やったら300人くらい」
死刑囚の住んでいた自宅はそのまま
ところが2022年にはフジバカマの花があまり咲かず、この年の「金峰の里」にはアサギマダラの姿はなかった。それでも尾崎さんが地域づくりを諦めることはない。すぐさま大学生のボランティアとともにフジバカマの植え替えを敢行し、翌年を見据えている。
金峰の見どころは、秋のアサギマダラだけではない。春には『防長の吉野をつくる会』の皆で長年植樹を続けてきた山桜が一斉に花開く。
「かなり木が育ってきたこともあってか『桜が桃源郷のようだ』といった感想をもらいました。4月の2週間くらいで100人ほどの方がいらっしゃいます。『この県道を通るのが本当に楽しい』と言ってくださる方もおる。だけど、それは保見の家の前も通るんよ」