これをエチュードでやれって言うんだね。芝居のエチュードってのは即興劇のこと。さらに声を出さずにパントマイムで演じなさいと……ド素人の19歳には荷が重いよね(笑)

19歳時のオーディションでは「『ハハキトク』の電報を受け取った大学生を演じよ」とだけ書いてある台本を受け取り、「エチュード(即興劇)でやれ」と言われ、さらに「声を出さずにパントマイムで」と言われたこともある原田さん。回顧し「荷が重いよね」と笑う (撮影/大山克明) 

 オーディションに合格して選ばれたのは原田さんを含めて9人だった。勧誘してくれた演出家も出演するため英語劇の出演者は10人で、皆が芝居経験はない。演目はギリシア悲劇の大作だ。

「選ばれた全員、学芸会以外は何の経験もない連中ばかり。だけど、これが自分の全人生だという感じで打ち込んだ。5月から11月まで休みなしに毎日稽古するんです。夏休みも毎日朝10時から夜10時までやった。そしたら相当な間抜けでも上手になるよね(笑)。

 今でも忘れないのは9月のある日、稽古中に芝居の神様が降りてくるとでも言うのかな。自分の中にもう1人の自分が突如として現れたんですよ。芝居をしている生身の僕と、それからそれを客観的に演出している僕。『今ここのセリフはゆっくりじゃなきゃだめだぞ』とか、『ここで畳みかけろ』とか、頭の後ろから囁いてくるもう1人の自分がいる。そいつに『おいちょっと手を伸ばせ』って言われて、ふーっと手を伸ばすとビリビリビリって電流が体中に走るの。気持ちいなぁ、なんなんだこれはとなって、それでやめられなくなっちゃった。僕らがやってたのはギリシア悲劇だったけど、強烈な天からの刺激を受けた役者、原田大二郎の“悲劇”もここから始まったんだよね」

【前後編の前編。後編に続く

聞き手・文/末並俊司

【プロフィール】

原田大二郎(はらだ・だいじろう)/1944年生まれ。1967年に明治大学卒業後、劇団文学座へ入座。1970年に映画『裸の十九才(新藤兼人監督)』でエランドール新人賞を受賞。50年以上、舞台、映画、テレビなど様々な分野で活躍。1985年には『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』で幸せ配達人として出演し、お茶の間の人気者に。以降、役者だけでなく旅番組のMCなどオールマイティに活動。2023年3月16~19日の舞台『ちっちゃな星の王子さま』(下北沢「小劇場B1」)では脚本・演出・出演の3役をこなす。

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