培養したTIL製剤
その点、TIL療法は、がん細胞と戦うように教育されたリンパ球を選択的に培養してから体内に戻すため、直接的な攻撃が可能なのだ。
オランダがん研究所のジョン・ハーネン博士の報告によると、TIL療法は抗がん剤イピリムマブを服用するより、メラノーマの進行や死亡を約50%低減させたという。米国国立がん研究所の研究では、TIL療法の奏効率は56%、完全奏効率も約20%で、長期間継続している報告もある。
「TIL療法の場合、培養したリンパ球を体内に戻すのは1回で終わりますが、がん細胞と共に周囲のリンパ球を一緒に切除する手術と、強い抗がん剤で体内のリンパ球を排除する前処置が必要となります。どちらも体への負担が大きく、すべての患者さんに勧められる治療法ではありません」(舩越副センター長)
そういったリスクはあるものの、現在は子宮頸がんに対し、TIL療法の臨床試験が実施され、よりよい結果が待たれている。将来的にはメラノーマでの普及も目指す。
取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2023年3月31日号
舩越建/慶應義塾大学病院肉腫・メラノーマセンター副センター長