《現地時間20日:準決勝メキシコ戦》
野球世界一決定戦・WBCでは、日本は3月16日の準々決勝(東京ドーム)を勝たなければ、その4日後からのマイアミでの準決勝、決勝には進めない。よって、事前に出場が決定しているサッカーW杯や五輪のような、旅行会社の観戦ツアーは組まれない。そんな日本からの応援には、かなり駆け付けづらい状況にもかかわらず、準決勝メキシコ戦から、大勢の日本人ファンが集まった。
私の座る一塁ベンチ側BOX席には、偶然にも多くの日本人が固まった。左隣の席には、マツケンサンバ風の40代会社員男性。「外国人にはたくさん声を掛けられても、日本人にはドン引きをされています」と頭をかく彼は、見た目に反していたって謙虚。いち早く出社するためにと、帰国便は決勝戦のわずか数時間後。「12月には航空券を押さえていました」と、事前準備も抜かりない勤勉タイプだ。
右隣には、在米の30代女性二人組。「マイアミでは見たことない数の日本人。全米から集まっています」と教えてくれた。マツケンさんや筆者のような、ベスト4進出を信じてリスク覚悟でエアを押さえて、渡米を叶えられた人はごくわずか。日本からのファンは全体の1~2割で、むしろ「大谷さんとダルビッシュさんしかよく知らない」という在米邦人も、少なくはなかった。
それでも、日の丸の下に集いし同胞たちの思いは同じ。圧倒的多数のメキシコ人に、負けず劣らずの声援を送った。
試合は、序盤から3点差をつけられる重苦しい展開。私は「願掛けに、米国での野球観戦の定番、ピーナッツとクラッカージャック(キャラメルコーン)をみんなで食べましょう」と提案。他人が望んでもいないことを押し付けがちなところが、おっさんの典型だ。七回裏の日本攻撃直前に流れた『私を野球に連れてって』を合唱しながら、一緒に口に頬張ると、四番吉田が劇的な同点3ランを放った。ただ、この激アツの一打ですら、この夜のミラクルの序章に過ぎなかった。