ライフ

蚊を媒介に感染する「デング熱」 世界人口の約半数が感染リスクを持っている

「デング熱」の脅威とは?(イラスト/斉藤ヨーコ)

「デング熱」に対し世界人口の約半数が感染リスクを持つ、とは(イラスト/斉藤ヨーコ)

 人間は様々な感染症とともに生きていかなければならない。だからこそ、ウイルスや菌についてもっと知っておきたい──。白鴎大学教授の岡田晴恵氏による週刊ポスト連載『感染るんです』より、デング熱についてお届けする。

 * * *
「断骨熱」という別名を持つほど激烈な症状のデング熱は、蚊がヒトを吸血することによって媒介する感染症です。

 血液中にデングウイルスをもった感染者を吸血して運び屋となる蚊は主としてネッタイシマカで、デングウイルスと共にその起源はおそらくアフリカとされます。このアフリカの風土病だったデング熱とネッタイシマカが奴隷船で大西洋を渡り、西インド諸島や米国に運ばれたことが、広く世界へ拡散するきっかけと言われます。

 現在では東南アジア、中南米、アフリカなどの熱帯、亜熱帯の広い地域で流行し、実に25億人もの人々がデング熱流行地に住み、世界人口の約半分が感染のリスクを持っているとされます。年間患者数は1億人、その内で25万人がデング熱から重症化したデング出血熱を発症しています。

 最初に記録されたデング熱の流行は、1779年~1780年に北アメリカを席巻したときで、フィラデルフィアのベンジャミン・ラッシュ医師は「熱に伴う痛みは強烈である。頭、背中、手足。頭痛はときに後頭部、ときに眼球部を襲った。どの階層の人も、この病気を断骨熱と呼んでいる」と記述しています。感染しても無症状や軽症の人も多いのですが、高熱に骨が砕かれるかとも思われる程の強い関節痛や筋肉痛は「骨折熱」との呼び名すらあったのです。

 19世紀には主にカリブ諸島から中米地域で、20世紀に入ると熱帯・亜熱帯地域に広範囲に拡がって土着していきます。

 日本では、1942年~1945年に全国で約20万人の患者が発生、東南アジアからの輸送船に感染した船員がいたことでウイルスが侵入、日本に生息するヒトスジシマカが媒介して流行を起こしました。戦争中、南方に出征している日本兵の中でもデング熱が蔓延していたので、終戦後には帰還兵によってウイルスがもたらされ、流行が起こりました。その後、デング熱の国内での感染例は途絶えていましたが、2014年夏に約70年ぶりに国内感染した150人以上が見つかり、起点が東京中心部の公園だったこともあり大きく報道されました。

関連キーワード

関連記事

トピックス

12月中旬にSNSで拡散された、秋篠宮さまのお姿を捉えた動画が波紋を広げている(時事通信フォト)
〈タバコに似ているとの声〉宮内庁が加湿器と回答したのに…秋篠宮さま“車内モクモク”騒動に相次ぐ指摘 ご一家で「体調不良」続いて“厳重な対策”か
映画『国宝』に出演する吉沢亮と横浜流星
『国宝』の吉沢亮&横浜流星、『あんぱん』の今田美桜&北村匠海、二宮和也、菊池風磨、ダイアン津田…山田美保子さんが振り返る2025年エンタメ界で輝いた人々 
女性セブン
硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将(写真/AFLO)
《戦後80年特別企画》軍事・歴史のプロ16人が評価した旧日本軍「最高の軍人」ランキング 1位に選出されたのは硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将
週刊ポスト
米倉涼子の“バタバタ”が年を越しそうだ
《米倉涼子の自宅マンションにメディア集結の“真相”》恋人ダンサーの教室には「取材お断り」の張り紙が…捜査関係者は「年が明けてもバタバタ」との見立て
NEWSポストセブン
地雷系メイクの小原容疑者(店舗ホームページより。現在は削除済み)
「家もなく待機所で寝泊まり」「かけ持ちで朝から晩まで…」赤ちゃんの遺体を冷蔵庫に遺棄、“地雷系メイクの嬢”だった小原麗容疑者の素顔
NEWSポストセブン
渡邊渚さん
(撮影/松田忠雄)
「スカートが短いから痴漢してOKなんておかしい」 渡邊渚さんが「加害者が守られがちな痴漢事件」について思うこと
NEWSポストセブン
平沼翔太外野手、森咲智美(時事通信フォト/Instagramより)
《プロ野球選手の夫が突然在阪球団に移籍》沈黙する妻で元グラドル・森咲智美の意外な反応「そんなに急に…」
NEWSポストセブン
死体遺棄・損壊の容疑がかかっている小原麗容疑者(店舗ホームページより。現在は削除済み)
「人形かと思ったら赤ちゃんだった」地雷系メイクの“嬢” 小原麗容疑者が乳児遺体を切断し冷凍庫へ…6か月以上も犯行がバレなかったわけ 《錦糸町・乳児遺棄事件》
NEWSポストセブン
11月27日、映画『ペリリュー 楽園のゲルニカ』を鑑賞した愛子さま(時事通信フォト)
愛子さま「公務で使った年季が入ったバッグ」は雅子さまの“おさがり”か これまでも母娘でアクセサリーや小物を共有
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)は被害者夫の高羽悟さんに思いを寄せていたとみられる(左:共同通信)
【名古屋主婦殺害】被害者の夫は「安福容疑者の親友」に想いを寄せていた…親友が語った胸中「どうしてこんなことになったのって」
NEWSポストセブン
62歳の誕生日を迎えられた皇后雅子さま(2025年12月3日、写真/宮内庁提供)
《累計閲覧数は12億回超え》国民の注目の的となっている宮内庁インスタグラム 「いいね」ランキング上位には天皇ご一家の「タケノコ掘り」「海水浴」 
女性セブン
ネックレスを着けた大谷がハワイの不動産関係者の投稿に(共同通信)
《ハワイでネックレスを合わせて》大谷翔平の“垢抜け”は「真美子さんとの出会い」以降に…オフシーズンに目撃された「さりげないオシャレ」
NEWSポストセブン