宇都宮直子さん

「過度な推し活」について語る宇都宮直子さん

橘:それは男が「セクストピア(性の楽園)」に、女が「ロマントピア(愛の楽園)」に住んでいるからですよね。男はひたすらセックスを求め、女はロマンス(共感の物語)を求めるから、男と女は原理的にうまくいかないんです(笑い)。ホストクラブは、女性の幸福感を上手に演出するよくできたシステムだと感心する一方で、残酷さも感じます。

「推し活」が行き過ぎるとテロリストに

宇都宮:本人たちもある程度、共感力を搾取されていることはわかっていると思います。ある女の子は「歌舞伎町は共感の街」と言ってましたし。「ホストは『推し』だから、養分になってもいいんだ」と話す子もいます。

橘:「推し活」というのも、男女問わず一大産業になりましたよね。自分を犠牲にしてでも尽くすことに燃えるというのも、「ホス狂い」と同じで、女性に特有の傾向だと思います。

宇都宮:確かに、バンドマンを追っかける『バンギャ』とか、ジャニーズを追っかける『ジャニオタ』の中にも、ホス狂いと同じように身を粉にして働いて、そのお金で「何回ツアーを回れた」と誇らしげに言う女の子は多いです。

橘:人間には、自分以外のものにアイデンティティを融合するという特異な能力があります。ここにも性差があって、女の場合、個人に対してアイデンティティ融合する。その対象がホストやアイドルで、スポーツの世界でもチームというより、羽生結弦選手とか、やっぱり個人が対象になる。それに対して男の場合、集団にアイデンティティ融合することが多い。サッカーや野球のチームを熱狂的に応援するのは男ですよね。侍ジャパンでも、男はチームを応援し、女は大谷翔平選手などの“推し”がいるという印象です。

宇都宮:確かに、野球やサッカーが好きな男性ってどこか「監督目線」でチームを推している感じがする(笑い)。女性と同じようにアイドルを推すとしても、「箱推し」や「チーム推し」というか、ひとりにすべてを尽くして捧げるというよりは、「その集団があってこその個人」という捉え方をしているということですね。それって、女性の「推し活」よりも健全で病まない感じがして、なんだかうらやましいです。

橘:いや、集団にアイデンティティ融合する方が恐ろしいんじゃないですか。宗教原理主義にアイデンティティ融合するとテロリストになってしまうし、戦前の日本では国にアイデンティティ融合した若者たちが、特攻隊で敵の艦船に突っ込んで行くことになりましたから。それに対して個人へのアイデンティティ融合は、しょせん本人たちの問題ですよね。

宇都宮:いずれにせよ、過度な「推し活」は身を滅ぼす可能性が高い、ということか……。

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