中国の偵察気球の残骸回収作業=2023年2月5日、アメリカ・南部サウスカロライナ州沖[米海軍提供](時事通信フォト)

中国の偵察気球の残骸回収作業=2023年2月5日、アメリカ・南部サウスカロライナ州沖[米海軍提供](時事通信フォト)

 その理由を前述したS氏は「米軍基地やその周辺の電波情報や通信情報の傍受が目的だったのだろうが、あれくらいの機器では大した情報は取れない」と話す。今回傍受されリアルタイムで本国に送信されていたという情報は、兵器システムの電子信号や兵員間の通信だったらしい。米国防総省の副報道官も「中国がこれまで人工衛星から収集していた情報と比べ、付加価値をもたらすものはほとんど与えていない」と述べている。

「米軍では重要な通信はセキュリティが強固だ。通信はすべて暗号化されている」とS氏の話に、スパイ映画などで見たころのある「安全な電話か」と尋ねるシーンが思い浮かんだが、単に通信が暗号化されているだけではないという。「米軍は軍事上、重要な情報伝達の場合、セキュリティが強固な専用の部屋で専用の電話機を使う」というのだ。

「この電話機は受話器を上げただけではかからない。電話機にロックがかかっていて、掛けるこちら側がロックを解除しなければ電話をかけることができない。電話を受ける側も同じだ。専用の電話機のロックを解除しなければ、電話を受けることができない。双方がロックを解除して電話が通じて初めて通信が暗号化され通話できる。通話に用いられている暗号は、おそらくスーパーコンピューターがなければ解読できないほど高いセキュリティレベル。気球にスーパーコンピューターでも搭載していれば別だが、あれぐらいの大きさの気球重要情報の傍受は不可能だ」(S氏)

 しかしどのような情報であれ、偵察用気球が領空を飛び、実際に通信を傍受されていたとなれば気球は軍事利用が目的だったということになる。国家安全保障会議のカービー戦略広報調整官は3日、「情報収集を制限する措置を取った」と強調したが、バイデン政権の危機管理能力が問われそうだ。

「気球が通信を傍受することがわかれば、たかが気球というわけにはいかない、軍事目的の未確認飛行物体がゆっくりと頭上を飛んでいれば、それだけで不安や恐怖を感じるのが人間だ。発見する度に騒ぎになり、バイデン政権の対中政策が問題になるだろう」(S氏)

 これまで危機感のなかった日本も、早々に無人機への武器使用基準を見直すことを決めた。日本上空にも飛んできたことがある気球。次に現れた時、日本政府はどのような対応を取るのだろうか。

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