自衛隊による大規模接種会場は3月25日で閉鎖。防衛省によると、東京会場では3月13日から18日までの1250人の予約枠に対し、445回の接種にとどまったという(写真/アフロ)

自衛隊による大規模接種会場は3月25日で閉鎖。防衛省によると、東京会場では3月13日から18日までの1250人の予約枠に対し、445回の接種にとどまったという(写真/アフロ)

ガラガラの会場に大量のスタッフで総額4兆円

 いずれにせよ、国はまだ3億回分ほどのワクチンの在庫を抱えている計算で、このままでは国民の税金で購入したワクチンが大量に廃棄されることになりかねない。なぜ、政府は“無駄”なワクチンをこれほど買い込んだのか。医療ガバナンス研究所理事長で内科医の上昌広医学博士がこう指摘する。

「厚労省の判断ミスに尽きます。コロナの感染が広がった当初、製薬メーカーのファイザーが世界各地でワクチンの治験をする際に日本も候補地にあがっていたのに、厚労省が外国企業だからと安全面での条件などを設定したため治験地から外れました。治験を進めていた他国はワクチンをどんどん先に購入していったが、日本はいざファイザーから購入する際に改めて治験することになって契約が遅れた。

 メーカーは供給契約が早い方から供給するため、契約が遅れた日本ができるだけ早くワクチンを調達するには、大量に購入して高い金額で買う必要があったのでしょう」

 必要量を先に確保するワクチンは、状況が変われば当然不要になる可能性もある。上さんは「足りないとまずいと考えるか、余らせるのが悪いと考えるかの違い」としながらも、こう続ける。

「会計検査院は『それ以上の説明がなかった』と厚労省の対応も問題視しています。同省にすれば、“出足が遅れたから契約量も増やして確保した”と言えば自分たちのミスを認めることになるため、黙っているのでしょう」(上さん・以下同)

 ワクチン接種をめぐる“無駄遣い”はそれだけではない。

 国のワクチン購入費は1回分約2700円だが、それとは別に、医療機関に支払う接種費用が1回平均3700円かかっている。自衛隊や自治体、企業が設置した接種会場の人件費や設営も当然税金だ。接種会場には多くのスタッフを配置し、接種を受けるまでに何度も書類の確認を要した。「いったい何人のチェックが必要なのか」とため息をついた人も多いことだろう。

 それらを含めてワクチン接種には昨年度までの2年間で総額4.2兆円の税金が使われた。

「これも厚労省の完全な怠慢です。ワクチン接種が開始されたとき、国立病院などの医師たちに真っ先に接種させた一方で、一般人のために病院を接種会場にするような段取りはとらなかった。厚労省が全国の国立病院で大々的に接種に従事するよう通達を出せばよかったのに、それをしなかったわけです。

 それで自治体などが大規模接種会場を設置して民間委託することになった。結果的に余分な費用がかかったのは、厚労省が動かなかったことが大きいと考えます」

 廃棄や、不良在庫となった大量のワクチンと、過剰人員で人件費などがかさんだ大規模接種会場など、これまでに「ワクチンだけで少なくとも数千億規模、会場費など含めれば1兆円近くの税金が無駄になる可能性がある」(前出・社会部記者)との見方もある。

 政府の尻拭いのために、後先考えず国民への同意もなく使用されたカネは、いずれ増税となって国民に請求書が回ってくるのは確実だ。

※女性セブン2023年4月27日号

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