4月15日、和歌山市の雑賀崎漁港で岸田文雄・首相が街頭演説する直前に爆発が起きた事件は、演説会場にいた木村隆二容疑者(24)による計画的な犯行だった可能性が高いとみられている。昨年に起きた安倍晋三・元首相の銃撃事件に続き、またしても演説中に、しかも今回は現役総理が狙われたとあって、要人の選挙演説に伴う危機管理体制が問われている。
元大阪市長で弁護士の橋下徹氏は4月16日、『日曜報道 THE PRIME』(フジテレビ系)に出演し、「選挙演説のあり方を見直すべき」と持論を語った。「首相や大臣、その他要人は、自分にリスクがあるということを把握した上で、リスクに合わせた演説をすべきだと思います」と言い、有権者になるべく近づくスタイルの選挙演説について「要人はやるべきではないと思います」と語った橋下氏。自身の政治家時代、大阪府警から「 “選挙カーの上で”とか“みかん箱はやめてほしい”とかいろんな要望があった」として、選挙カーで演説するスタイルにしたという。
しかし、こうした橋下氏の主張について、自民党関係者は「党として演説スタイルを見直すのは容易ではない」と言う。
「橋下さんが言っているのはごもっともなんですが、自民党の選挙スタイルは、今も田中角栄・元総理の時代の流儀を引き継いでいます。角栄さんは有権者と同じ目線に立つため、演説はミカン箱やリンゴ箱、ビールケースといった低い台に載ってやるべきと言っていましたし、それを小沢一郎さんはじめ歴代の幹部たちが踏襲していきました。
安倍元総理も“上から目線のお坊ちゃん”と見られることを嫌って、ここぞという時にはビールケースに載っていましたし、今回の岸田総理の演説にしても、台は低いものでした。農村や漁村を支持基盤としてきた自民党にとって、有権者にいかに親近感を持ってもらえるかは大切で、むしろ要人になればなるほど、低い台に上ることの効果は高いとされている。その価値観はなかなか変えられるものではありません」